腸性先端皮膚炎 (Acrodermatitis Enteropathica: AE) は腸管からの亜鉛吸収障害を病因とする常染色体劣性遺伝性疾患であり、性差は認められない。本疾患は、腸管における亜鉛の細胞内取り込みに重要な特異的輸送タンパク、Zinc/Iron-regulated transporter-like Protein 4 (ZIP4) をコードするSLC39A4遺伝子のホモ接合あるいは複合ヘテロ接合変異により、ZIP4を介した小腸上皮からの亜鉛吸収が障害されて全身の亜鉛欠乏を生じる。四肢末端及び開口部 (口囲、鼻孔、眼囲、耳孔、耳介、肛囲、外陰) に、丘疹、小水疱、膿疱をともなう紅斑、びらん、あるいは結痂を生じる。さらに、鑷幹、爪変形、爪囲炎、脱毛 (全頭、眉毛、睫毛、毳毛) なども生じる。皮膚症状以外では、下痢、発育不全、免疫能低下、精神症状 (感情障害、食思不振、記銘力障害など) を呈する。検査所見としては、血清亜鉛値ならびに尿中亜鉛排泄量の低下、亜鉛酵素である血清ALP値の低下が特徴的である。AEの確定診断はSLC39A4遺伝子の遺伝学的検査にて行う。
デンマークでの頻度は1/500,000出生との報告があるが、チュニジアの北西部、サハラ砂漠以南のアフリカの地域や東南アジアの地域ではより一般的であると考えられている。日本では、2001年から2010年で4家系の報告がある (小児慢性特定疾病情報センターより引用)。
亜鉛投与にて症状は速やかに改善するが、再発を繰り返すため生涯にわたり治療が必要である。
治療は亜鉛薬の経口投与を行う。投与量は、亜鉛として乳児期3mg/kg/日、幼児期30-50mg/日、学童期以降50-150mg/日と大量投与が必要である。
Gene symbol | OMIM | SQM scoring* | Genomics England PanelApp | Phenotype | Variant information |
---|---|---|---|---|---|
SLC39A4 | 201100 | 11CC (P) | AEZ (AR) | https://www.omim.org/allelicVariants/607059 |
チュニジアにおけるAEの22家系29症例のうち、6家系8症例でc.1223_1227delCCGGG (p.Trp411ArgfsX7) 、4症例でc.143T>G (p.Leu48X) 、1症例でc.1784T>C (Gly595Val) の変異がホモ接合性で同定された (Int J Dermatol. 2010. PMID: 20883266) 。
わが国では2001-2010年までの10年間に4家系の報告がある。これら4家系でSLC39A4の病的バリアントが同定されており、うち独立した2家系の発端者は、同一の1438G>Tナンセンス変異のホモ接合体であった (Br J Dermatol. 2009. PMID: 19416256, J Invest Dermatol. 2003. PMID: 12787121)。