Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2020/03/31更新日: 2023/06/26
筋原線維性ミオパチー
小児・神経疾患
指定難病等
なし
ガイドライン等
なし
要注意の転帰
心筋症
呼吸不全
検査の保険適用
なし
概念・疫学

筋原線維性ミオパチー (Myofibrillar Myopathy: MFM) は筋病理学的特徴により定義される疾患で、筋原線維のZ帯に存在するタンパク質をコードする遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントによって筋原線維構造の破綻をきたす。原因遺伝子は複数報告されており、多くは常染色体顕性遺伝形式を示すが、常染色体潜性遺伝形式やX連鎖性遺伝形式を示す遺伝子も存在し、孤発例も存在する。

MFMでは近位筋や遠位筋が緩徐進行性に障害される。近位筋の筋力低下は約25%の患者でみられ、遠位筋の筋力低下は近位筋よりも顕著で、約80%の患者でみられる。臨床症状は多彩で、筋力低下の他に感覚障害、筋肉のこわばりや痛み、痙攣が生じることもある。ほぼすべての型のMFMで心伝導障害や心筋症、呼吸障害を合併しうる。遺伝子変異による筋疾患は小児期や青年期に発症するものが多いが、MFMでは発症年齢が若年から高齢にわたる。MFMはZ帯から始まる筋原線維の断裂と、異所性タンパク質の集積といった共通の筋病理学的変化を示すため、筋生検組織を用いた組織学的検査によって診断される。遺伝学的検査では約50%で病的バリアントが同定される。

40歳前の若年発症はDES遺伝子、50代以降発症で近位筋優位の障害例はFLNC遺伝子、50代以降発症で遠位筋優位の障害例はZASP (LDB3) 遺伝子あるいはMYOT遺伝子が原因と推定される (難病と在宅ケア. 21(4), 2015. 40-43)。骨格筋、心筋の他、眼のレンズにも多く発現しているαBクラスタリンをコードするCRYAB遺伝子変異例では、白内障の合併が特徴的である (臨床神経学. 53(11), 2013. 1105-1108)。BAG3は骨格筋や心筋に強く発現しており、BAG3遺伝子変異例では10歳代での心筋症、呼吸障害が高頻度で急速進行性である (臨床神経学. 52(11), 2012. 1151-1153)。筋病理学的に還元小体とよばれる細胞内封入体の存在を特徴とするのはFHL1ミオパチーで、臨床的に多様性があり、FHL1遺伝子は多くの筋疾患の原因でもある (臨床神経学. 53(11), 2013. 1105-1108)。DNAJB6遺伝子変異例では症状が進行しても、大腿直筋、薄筋、縫工筋、下腿前面の筋群が保たれるという特徴がある (臨床神経学. 53(11), 2013. 1105-1108)。

DES遺伝子によるMFMの有病率は100,000人に0.17人と推定されているが、MFM全体の有病率は現在のところ不明である (ClinGenより引用)。

日本人での頻度は不明である。

予後

合併症として生じうる心伝導障害や心筋症、呼吸障害は予後に影響する。

治療

MFMに対する根本的治療は現在のところないため、症状に対する対処療法を行う。

Genes
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

MFMの11%はLDB3、9%はMYOT、7%はDES、5%はBAG3、3%はCRYABとFLNC、FHL1、2%はDNAJB6の病的バリアントによるものであるという報告がある (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

現時点で日本人患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。

掲載日: 2020/03/31更新日: 2023/06/26