常染色体優性低リン血症性くる病 (Autosomal Dominant Hypophosphatemic Rickets: ADHR) では、線維芽細胞増殖因子23 (fibroblast growth factor 23: FGF23) 遺伝子の異常により、骨基質の石灰化障害が生じる。ADHRでは、腎近位尿細管においてナトリウム-リン共輸送体の発現を低下させてリンの再吸収を抑制しているFGF23遺伝子の生理的切断部位近傍に変異が生じることで切断に対して抵抗性が生じ、全長FGF23が増加する。これに伴い、尿中リン酸排泄増加によりリンの不足をきたす。小児発症例は2歳前後でくる病、下肢の変形を示し、成人発症例は思春期前後に骨痛、筋力低下を呈するが下肢の骨変形はない (日本臨床. 別冊内分泌症例群II. 392-394. 2018)。症状は比較的軽度である。
臨床症状、血液・尿化学検査、X線検査によって診断をする。過リン酸尿に由来する低リン血症が存在するが、血中Ca値は正常で血中ALP値が高値を示す。著しい低リン血症であっても血中1,25 (OH) 2D濃度は正常からやや低値であり、血中FGF23濃度は症例により異なるが、臨床症状が著明なもの、血中鉄濃度が低いほど高い。血中、副甲状腺ホルモン及び25 (OH) D値は正常であり、アミノ酸尿及び高カルシウム尿症はない。小児期でのX線所見では骨幹端でのfrayingとcuppingを認め、成人期では偽骨折を認める。確定診断はFGF23遺伝子の遺伝学的検査による (日本臨床. 別冊内分泌症例群II. 392-394. 2018)。これまでに、ADHRの病的変異として切断部位近傍に4つの変異 (R176Q, R176W, R179Q, R179W) が同定されている (Nat Genet. 2000. PMID: 11062477, J Bone Miner Metab. 2010. PMID: 19655082)。
有病率は1,000,000人に1人より低く、これまで報告された症例は100例に満たない (ClinGenより引用)。日本人での頻度は不明である。
予後は良く、内科的治療により成長と骨格変形が正常化することがある。
内科的治療は活性化ビタミンDと中性リンの併用投与を行う。二次性副甲状腺機能亢進症及び腎石灰化症を防止するために、血中PTH値、及ぶ尿中Ca/Cr比をモニターしながら治療を行う。骨格変形に対しては、症例により整形外科的な矯正手術を要することもある (日本臨床. 別冊内分泌症例群II. 392-394. 2018 )。
Gene symbol | OMIM | SQM scoring* | Genomics England PanelApp | Phenotype | Variant information |
---|---|---|---|---|---|
FGF23 | 193100 | 3CC (P) | Hypophosphatemic rickets (AD) | https://omim.org/allelicVariants/605380 |
46家系76人のシークエンス解析をしたところ、1人にR179W変異が検出された (Clin Endocrinol (Oxf). 2011. PMID: 21050253)。
現時点で日本人患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。