Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2020/03/31更新日: 2020/05/21
無セルロプラスミン血症
小児・神経疾患
OMIM
MedGen ID
指定難病等
なし
要注意の転帰
神経症状の増悪
糖尿病
検査の保険適用
なし
概念・疫学

セルロプラスミン (CP) 遺伝子の異常により、肝臓、膵臓、中枢神経などの諸臓器に鉄が蓄積することで種々の臓器障害を生じる常染色体劣性の先天性鉄代謝異常症である。三主徴として、糖尿病、網膜変性、中枢神経症状が挙げられる。典型的な臨床経過は、10-20歳代に鉄剤治療に不応性の小球性低色素性貧血がみられ、20-40歳頃から糖尿病を発症し、40-50歳代に神経症状が出現する。中枢神経症状は不随意運動、小脳失調、パーキンソニズム、認知症などである。神経症状は出現せず、貧血と糖尿病だけを呈する症例も認められる。CP遺伝子がコードする糖タンパクのセルロプラスミンは、1分子中に6個の銅を抱合する。フェロオキシダーゼ活性を有し、細胞膜の鉄輸送タンパクであるフェロポルチンを介して細胞外へ輸送された二価鉄 (Fe2+) を三価鉄 (Fe3+) に酸化して、Fe3+を鉄輸送タンパクであるトランスフェリンに受け渡す。無セルロプラスミン血症 (Aceruloplasminemia: ACP) は、CP遺伝子の変異によりフェロオキシダーゼ活性が低下することで、Fe2+からFe3+への変換が障害され、鉄の細胞内貯蔵から血液中への移動が減少して細胞内に鉄が過剰蓄積する。最近の研究では、Cys338SerやIle991Thrなどのホモ接合体変異は残存フェロオキシダーゼ活性と関連して神経症状の程度に影響することや、Gly631Argのホモ接合体変異は白人患者の錐体外路症状に関連することなどが示唆されている (Front Neurosci. 2019. PMID: 31024241)。

本疾患に特徴的な臨床症状に加え、血清セルロプラスミン値の極端な低下 (測定感度以下) と血清鉄の低下、血清フェリチン値の著増、血清銅の低下があれば本疾患が疑われる。確定診断にはCP遺伝子の遺伝学的検査が必要である (先天代謝異常ハンドブック)。

日本での有病率は、非近親婚で、約2,000,000に1人と推定されている (ClinGenより引用)。

予後

神経症状は緩徐進行性であり、早期診断と早期治療が重要である。

治療

稀な疾患であるため、体系的な治療法は検討されていない。鉄キレート薬の投与や新鮮凍結血漿と鉄キレート薬の併用療法、あるいは亜鉛薬投与などが行われている (先天代謝異常ハンドブック)。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
CP60429010CC/10CD/8CDAceruloplasminemia (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/117700
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

現時点で欧米人患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。

日本人での遺伝子頻度

シークエンス解析によりCP遺伝子に病的バリアントを同定する割合は94%であったという報告がある (GeneReviewsより引用)。日本人4,990人で血清セルロプラスミン値をスクリーニングし、低値だった31人についてシークエンス解析を実施した結果、病的バリアントの頻度は70/100,000と推定された (Neurology. 1999. PMID: 10449129)。

掲載日: 2020/03/31更新日: 2020/05/21