Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/10/13
ウィルソン病
小児・神経疾患
OMIM
MedGen ID
GeneReviews
指定難病等
要注意の転帰
肝不全
検査の保険適用
あり
概念・疫学

ウィルソン病 (Wilson disease) はATP7B遺伝子の変異によって胆汁中への銅排泄障害によって引き起こされる先天性銅過剰症であり、常染色体劣性遺伝形式を示す。肝障害、神経症状、精神症状、及びこれらの症候が組み合わさった病状を呈し、その程度は家系間及び家系内でも多彩である。発症年齢は3歳から50歳代と幅広く分布しており、明らかな性差は認められない。

肝障害には、反復性の黄疸、急性肝炎様の一過性の肝障害、自己免疫性肝炎、劇症肝不全、慢性肝疾患などが含まれる。神経症状には、運動異常 (振戦・稚拙な協調運動、微細な運動調節が困難、舞踏病様運動、舞踏病性アテトーゼ) や筋固縮性ジストニア (仮面様顔貌、筋固縮、歩行困難、仮性球麻痺症状) などがある。精神症状には、うつ、神経症性の行為、人格障害などがみられ、時に知的退行もみられる。カイザー-フライシャー輪 (Kayser-Fleischer rings) をしばしば認めるが、これは角膜のデスメ膜への銅沈着によって生じ、体内の銅の蓄積が多いことを反映している。血清セルロプラスミン値の低下と尿中銅排泄量の増加が認められれば本疾患と診断できる。これらの検査で診断が確定できない場合には、肝銅含量の測定あるいはATP7B遺伝子の遺伝学的検査を実施する。

ウィルソン病の有病率は、ほとんどの人種で30,000人に1人と推定されている。一般人口中の保因者率は90人に1人である。特にサルディーニャのような隔離集団においては10,000人に1人と頻度が高いことが最近報告されている。

予後

早期に診断され適切な治療を続けた場合は予後良好なことが多い。治療の中断は致死的である。

治療

銅キレート剤 (ペニシラミン、トリエンチン) や亜鉛製剤による治療を可及的速やかに開始することで、肝・神経・精神症状を減らすことができる。内服は生涯続ける必要がある。肝不全となった場合は肝移植の対象となる。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
ATP7B27790010DAWilson disease (AR)https://omim.org/allelicVariants/606882
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

ウィルソン病患者におけるATP7B遺伝子のシークエンス解析により、98%の患者で病的バリアントを同定したという報告がある 。ATP7B遺伝子のp.His1069Glnはヨーロッパを起源とする民族における病的バリアントの35-45%を占め、東ヨーロッパではより頻度が高い。小児期発症例や肝疾患を呈する症例では頻度は低くなる。また、サルディーニャでは、1kbのプロモーター領域における15bpの欠失 (c.-441_-427del15) の頻度が高い 。アジア人においてはp.Arg778Leuが比較的頻度が高い病的バリアントであり、18歳未満の症例において約57%を占める (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

日本人のウィルソン病41家系47患者においてATP7B遺伝子のシークエンス解析を行ったところ、21の病的バリアントを認め、そのうち9つが新規の変異であったという報告 (Hum Mutat. 2000. PMID: 10790207) や、日本人のウィルソン病疑い患者23人でATP7B遺伝子に10のホモまたは複合ヘテロ変異を認めたという報告がある (Hepatol Res. 2011. PMID: 21707886)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/10/13