Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/22
フォンウィルブランド病
小児・神経疾患
指定難病等
なし
ガイドライン等
なし
要注意の転帰
外傷後止血困難
流産
分娩時の異常出血
検査の保険適用
なし
概念・疫学

フォンウィルブランド病 (von Willebrand Disease: VWD) は、血漿フォンウィルブランド因子 (VWF) の量的減少または質的異常により、血小板粘着及び凝集の障害と血液凝固第VIII因子低下を示す。多くは優性遺伝形式であるが、一部は劣性遺伝形式を示す。病態が多様であり、VWFの量的減少である1型 (全体の約70%)、質的異常の2型 (全体の約25%) と完全欠損の3型 (全体の5%以下) に分類され、2型には2A、2B、2M、2Nの4亜型が存在する。病型により出血症状の重症度が異なり、1型は軽症であることが多いが、2型 (特に2A型) 及び3型は重症の出血をきたしやすい。粘膜出血を特徴とし、鼻出血、口腔内出血、皮下出血、抜歯後止血困難などがみられる。女性では月経過多、卵巣出血、妊婦においては分娩時あるいは分娩後の異常出血を生じる可能性がある。3型は皮膚・粘膜出血に加えて関節内出血や筋肉内出血などの深部出血も生じ、出血の程度も重い。VWDでの出血症状は重症度に依存するため、3型は早い時期に明らかになるが、1型は出血の既往があっても中年期まで診断されないことがある。VWDの診断は、一般的にVWDに特異的な止血因子検査及び/または唯一の原因遺伝子であるVWFの分子遺伝学的検査が必要となる。

VWD患者は人口の0.1-1%に存在すると推定されている。3型は1,000,000人に0.5-6人の罹患率と考えられるが、近親婚の割合とともに上昇する (GeneReviewsより引用)。

血友病に次いで多い遺伝性出血性疾患であり、平成25年度血液凝固異常症全国調査 (厚生労働省委託事業) によるとわが国には1,084人のVWD患者が存在する。

予後

明らかな症状は止血困難だけであり、年齢が長ずるにつれて出血症状がより明らかとなる。上記のとおり、3型VWDは早い時期に明らかになるが、1型VWDは、出血の既往があったとしても、中年期まで診断されないことがある。VWD妊婦は出血性合併症のリスクが増加するため、出血性疾患の周産期管理に経験のある医療機関でのケアが必要である。遅延性、二次性の産後出血が問題となることがある。

治療

VWF及び第VIII因子を含む血漿由来の不活性凝固因子濃縮物の静脈内注入によって、出血症状の予防やコントロールができる。VWDのタイプによるが、軽度な出血症状には、通常バソプレッシンアナログであるデスモプレッシンの静脈内注射もしくは皮下注射が有効である。フィブリン溶解阻害剤や月経過多に対するホルモン剤などの投与も症状緩和に有用である (GeneReviews Japanから引用)。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
VWF19340010CA/9CB/6CBVWD1 (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/613160
VWF61355410CA/9CB/6CBVWD2 (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/613160
VWF27748010CA/9CB/6CBVWD3 (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/613160
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

1型では68%の患者でVWFの病的バリアントが同定され、2型と3型においては94%の患者でVWFの病的バリアントが同定される (Thromb Haemost. 2012. PMID: 22871923)。【VWD1型】血漿中VWFタンパク量 (VWF: Ag) 及び機能的VWF検査 (VWF: Rco) で30 IU/dL未満の時、通常完全浸透で優性遺伝形式のミスセンス変異が確認できる。VWF: AgとVWF: Rcoレベルが20-80 IU/dLでは、患者の約50%で、p.Y1584Cのような不完全浸透で優性遺伝形式のミスセンス変異が確認される (GeneReviewsより引用) 。ヨーロッパ9か国のVWD1型の発端者150人についてVWFの解析を実施したところ、その30%で変異が検出されず、検出された変異の中で最も頻度が高かった (発端者の8%) のはp.Y1584C変異であった (Blood. 2007. PMID: 16985174) 。ただし、以前より候補変異として報告されているミスセンス変異p.Y1584C、p.R1205H、P.R924Q 、p.R1315Cが病態の発症に関与しているかは明らかではないという意見もある。【VWD2型】2A型や2M型のほとんどの病的バリアント、及び2B型の全ての病的ミスセンス変異がエクソン28に存在する (GeneReviewsより引用) 。【VWD3型】VWDに関する病的バリアントはVWFコード領域のいたるところで検出される。コード領域全体のシークエンス解析に欠失/重複解析を加えることにより約90%で病的バリアントを検出できる (GeneReviewsより引用) 。

日本人での遺伝子頻度

現時点で日本人患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/22