糖原病II型 (GSDII、別名、ポンペ病) は、ライソゾーム酵素である酸性α-グルコシダーセ (GAA) の欠損または活性低下を原因とする常染色体劣性遺伝性疾患である。糖原病の中では唯一のライソゾーム蓄積疾患であり、罹患者では多くの組織 (なかでも骨格筋、心筋及び平滑筋) のライソゾームにグリコーゲンが蓄積し障害される。発症年齢、罹患臓器、ミオパチーの程度によって、幅のある連続的な疾患スペクトラムを示すと考えられるが、用語の統一を図るべく、発症時期に関して乳児型と小児型・成人型の2病型に大別される。乳児型は、著明な心肥大 、肝腫大 、筋力低下及び筋緊張低下を特徴とし、心肺不全により生後12ヵ月以内に死亡する急速進行性の経過をとる。本疾患の臨床病型の中で最も重症なものであり、古典型ポンペ病と呼ばれることが多い。小児型は、通常、乳児期 (6-12ヵ月) 以降の発症であり、進行は緩徐で病変は骨格筋に限られ、重度の心筋症をきたさないが、2歳以前に発症した症例では心肥大が認められる場合もある。成人型は、骨格筋が主に罹患する、緩徐進行性ミオパチー (初発症状は筋力低下、歩行障害など) を特徴とし、10歳代から60歳代で幅広く発症する。GSDIIの診断は、GAA酵素活性低下の証明、もしくはGAA遺伝子の病的バリアントの同定による。GSDIIの発生頻度は、民族及び国によって異なる。日本の「ライソゾーム病の病態の解明及び治療法の開発に関する研究班」による一次調査では、29例の患者が報告されている (平成13年度報告)。他国では 、乳児型はアフリカ系アメリカ人及び中国人での発生頻度が高く 、成人型はオランダ人に多いことが報告されている。GSDII全体の発生頻度はおよそ1/40,000 (14,000人-300,000人に1人) であると推定されている。
古典的な乳児発症型GSDIIでは酵素補充療法 (ERT) をしなければ、通常、生後1年以内に進行性左室流出路閉塞で死亡する。非古典的な乳児発症型GSDIIでは生後1年以内に運動機能遅滞及び/もしくは緩徐に進行する筋肉虚弱が起こり、典型例では小児初期に換気不全で死亡する。心肥大がみられる場合があるが、心臓疾患は大きな死亡原因とはならない。遅発型ポンぺ病の特徴は、近位筋の虚弱及び心臓病変を伴わない呼吸機能不全であり、呼吸機能不全が遅発型の有病率及び死亡率の最大原因であり10歳代もしくは20歳代の死亡が多い。
乳児型GSDIIに対しては、アルグルコシダーゼ アルファによるERTを行う。あわせて多系統臓器障害に対する治療・管理を行う。
Gene symbol | OMIM | SQM scoring* | Genomics England PanelApp | Phenotype | Variant information |
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GAA | 232300 | 9CB/6DD | GSD2 (AR) | https://omim.org/allelicVariants/606800 |
GSDII型患者における、GAA遺伝子変異の頻度は、乳児発症型のアフリカ系米国人患者では50-60%がp. Arg854X変異、乳児発症型の中国系患者では40-80%がp. Asp645Glu変異、遅発型の成人患者で50-85%がc.336-13T>G変異 (典型的には複合ヘテロ接合体として) を有するという報告がある。GAA酵素活性が低下または完全欠損している患者で、シークエンス解析手法により、GAA遺伝子に2つの病的バリアントが検出される割合は83-93%という報告がある (GeneReviewsより引用)。
現時点で日本人でのGSDII患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。