Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/25
低ホスファターゼ症
小児・神経疾患
MedGen ID
GeneReviews
指定難病等
要注意の転帰
呼吸不全・骨折
検査の保険適用
あり
概念・疫学

低ホスファターゼ症 (Hypophosphatasia: HP) は、全身に分布する組織非特異的アルカリホスファターゼ (TNSALP) が先天的に欠損し、骨をはじめとする様々な臓器に症状を呈する疾患である。TNSALPをコードするALPL遺伝子の変異によってアルカリホスファターゼ (ALP) 活性が低下し、石灰化阻害因子であるピロリン酸の脱リン酸化が阻害され蓄積することでハイドロキシアパタイトが形成されず、骨の石灰化が阻害される。またALPはビタミンB6代謝にも関与しており、ALP活性の低下により、ピリドキサール5リン酸から血液脳関門を通過可能なピリドキサールへの変換ができずに脳内神経伝達物質合成が阻害されて痙攣が起こる。多くは常染色体劣性遺伝だが常染色体優性遺伝を示す変異もある。多くの症例で両親が保因者であることが証明され、de novoの頻度は低いと推定されている。ALPL遺伝子の変異は翻訳領域全体にわたって認められ、現在300種類以上報告されている。変異の種類により残存酵素活性が異なるとされ、臨床像の多彩さにつながっている。HPは発症年齢と臨床症状に基づいて以下の6つに分類される。(1) 最重症とされ出生直後から胸郭低形成のために呼吸不全になる「周産期重症型」、(2) 胎児期から骨変形があり胎児診断されるが出生後は呼吸不全など重篤な症状がなく骨症状も自然軽快する「周産期軽症型」、(3) 出生時には無症状だが生後6ヶ月までに骨変形や高カルシウム血症による症状が見られる「乳児型」、(4) 生後6ヶ月以降に乳児型の症状が出現する「小児型」、(5) 成人期、特に中年期以降に反復する疲労骨折や骨折治癒の遅延で発症する「成人型」、(6) 歯のみに症状が限局し骨症状がない「歯限局型」である。臨床病型により骨・歯のX線所見は異なるが、石灰化障害、長幹骨の変形、骨幹端の不整、狭胸郭、骨幹端から骨幹に向かうX線透過性の舌状突出、骨幹端の拡張、肋軟骨の念珠形成などが認められる。血清ALP活性の低下は必須の所見であり、尿中アミノ酸分析でALPの基質であるホスホエタノールアミンの上昇を認める。ALPL遺伝子の遺伝学的検査を行うことが望ましいが、診断に必須ではない。

カナダのオンタリオの小児病院での記録に基づくと、常染色体劣性の周産期型、乳児型HPの出生率は100,000人に1人、ALPL遺伝子の病的バリアントのヘテロ接合体頻度は約150人に1人と推定される。またカナダのメノナイトでは、周産期重症型の患者は2,500人に1人で、保因者頻度は25人に1人となる。

フランスやヨーロッパでの分子遺伝学的検査によると、重症型の有病率は300,000人に1人と推定される。軽症の病型 (周産期軽症型、小児型、成人型ならびに歯限局型の低ホスファターゼ症) の頻度は、6,300人に1人よりも高いと予測される。フランスでのALPL病的変異のヘテロ接合体の頻度は275人に1人と推定される (GeneReviewsより引用)。日本では、c.1559delT病的バリアントのホモ接合体の頻度が900,000人に1人であることと、日本人患者のアレル全体のうち、c.1559delTの割合が40.9%であることを基に、重症型の低ホスファターゼ症の出生率は150,000人に1人と推定されている (GeneReviewsより引用)。

予後

HPの予後は病型により異なる。周産期重症型は胸郭低形成による呼吸不全により無治療では生後早期に死亡する。周産期軽症型は出生後の呼吸不全などの症状は見られず骨症状も自然軽快することが多い。乳児型は徐々に体重増加不良や筋力低下が始まり呼吸器感染症で死亡する例も多く予後は良好とは言えない。小児型の予後は様々で乳歯の早期脱落による摂食障害が問題になることが多い。成人型は中年期以降の骨折が問題になり、歯限局型の予後は一般に良好である。

治療

以前は対症療法のみであり、高カルシウム血症に対して低カルシウムミルクを使用したり、ビタミンB6欠乏による痙攣にビタミンB6補充を行ったりしていた。現在はasfotase alfaによる酵素補充療法が認可されている (週3回の皮下注射を必要とする)。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
ALPL24150010CC/7CC/4DDHypophosphatasia, infantile (AR)http://omim.org/allelicVariants/171760
ALPL24151010CC/7CC/4DDHypophosphatasia, childhood (AR)http://omim.org/allelicVariants/171760
ALPL146300N/AHypophosphatasia, adult (AD, AR)http://omim.org/allelicVariants/171760
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

HPの患者において、ALPLの病的バリアントが原因である割合は不明であるが、シークエンス解析によりALPLに病的バリアントが同定される割合は~95%と報告されている (GeneReviewsより引用)。変異の種類が多彩でありほとんどの変異について頻度は不明である。カナダのMennonitesではGly334Aspの変異が1/25の頻度で見られる (Genomics. 1993. PMID: 8406453)。

日本人での遺伝子頻度

95%以上でALPLの病的バリアントが同定される。遺伝子変異が集中している領域はなく、翻訳領域全体にわたって変異が認められ、79%がミスセンス変異であり、常染色体劣性遺伝形式をとる重症型はホモ接合体よりも複合ヘテロ接合体の頻度が高い。日本人ではc.1559delTとp.Phe327Leuの変異頻度が高い。前者は周産期重症型と相関が高いのに対して、後者は周産期に発症するにもかかわらず致死的ではない (先天代謝異常ハンドブック. 412-413. 中山書店)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/25