Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/29
多発性内分泌腫瘍症1型、2A・2B型/甲状腺髄様がん
循環器・内分泌疾患
MedGen ID
指定難病等
要注意の転帰
がん転移
検査の保険適用
あり
概念・疫学

多発性内分泌腫瘍症 (Multiple Endocrine Neoplasia: MEN) は、複数の内分泌臓器及び非内分泌臓器に異時性に良性、悪性の腫瘍が多発する症候群で、MEN1とMEN2の2疾患を含む。いずれも常染色体優性遺伝形式をとる。MEN1では副甲状腺機能亢進症、下垂体腺腫、膵・消化管内分泌腫瘍が三大病変であり、他に副腎や皮膚、胸腺などにも腫瘍が発生する。MEN2はMEN2A、MEN2B及び家族性甲状腺髄様がん (Familial Medullary Thyroid Carcinoma: FMTC) の3病型に細分される。いずれの病型も甲状腺に髄様がんを生じる危険性を有する。MEN2AとMEN2Bでは褐色細胞腫のリスクも高く、MEN2Aでは副甲状腺の過形成あるいは腺腫を生じるリスクも有する。MEN2Bでみられる他の所見としては、口唇や舌の粘膜神経腫、厚い口唇を伴う特徴的な顔貌、消化管の神経節腫、マルファン様体形などがある。甲状腺髄様がんはMEN2Bでは小児期早期、MEN2Aでは若年成人期、FMTCでは中年期に発生する。MEN1の原因遺伝子はMEN1、MEN2の原因遺伝子はRETであり、遺伝学的検査により診断が確定される。

MEN1、MEN2のいずれも海外では約30,000人に1人の頻度とされており、これを当てはめると国内の患者はそれぞれ約4,000人と推測される。

予後

胸腺腫瘍の存在はMEN1における死亡リスク増大に関与している (ハザード比 4.29)。胸腺腫瘍の診断からの平均生存期間は9.5年であり、70%の患者は同腫瘍が直接の死因となっている。MEN1関連腫瘍の早期発見と治療法の進歩にもかかわらず、MEN1患者が早期死亡にいたる危険性は依然として残されており、現在約30%の患者はMEN1に関連する悪性腫瘍で死亡している。MEN2Bは悪性度の高い甲状腺髄様がんの早期の発症が特徴的であり、早期 (1歳以前) の甲状腺切除術を受けないMEN2B患者では、早い時期に転移性甲状腺髄様がんを生じる危険性が高い。早期の甲状腺切除術を含む治療介入が行われる以前には、MEN2B患者の平均死亡年齢は21歳であった。

治療

現在のところ本症における腫瘍の発生や増殖を阻止する方法は存在せず、治療の原則は定期検査により病変を早期に発見し外科的治療を行うことである。罹患臓器が多岐にわたるため、患者は多数の定期検査を受ける必要があり、多くの場合、複数回の手術を繰り返す必要がある。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
MEN113110010CB/9CB/8CB (P), 11CB/10CB (A)MEN1 (AD)https://omim.org/allelicVariants/613733
RET17140010CD/9CA/9CD (P), 11CD/9CA/9CD (A)MEN2A (AD)https://omim.org/allelicVariants/164761
RET16230011CD/9CB (P)MEN2B (AD)https://omim.org/allelicVariants/164761
RET15524010CD/9CA/9CD (P), 11CD/9CA/9CD (A)MTC (AD)https://omim.org/allelicVariants/164761
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

MEN1患者において、MEN1遺伝子のシークエンス解析により生殖細胞系列の病的バリアントを同定できる頻度は、家族性では80-90%であり、孤発性では65%である。またMEN2患者において、RET遺伝子のシークエンス解析により生殖細胞系列の病的バリアントを同定できる頻度は、MEN2A/2Bでは>98%、FMTCでは>95%であるという報告がある (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

17人の日本人MEN1家系の発端者 (家族性症例) においてMEN1遺伝子のシークエンス解析を行ったところ、17家系全てにMEN1遺伝子の病的バリアントを認め、孤発例21例においては9例に病的バリアントを認めたという報告 (Biomed Pharmacother. 2000. PMID: 10914990) があり、また、RET遺伝子の病的バリアントを、MEN2A患者34人中33人に、MEN2B患者4人全員に、FMTC患者6人中5人に、孤発例の甲状腺髄様がん患者22人中5人に認めたという報告がある (J Hum Genet. 1998. PMID: 9621513)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/29