Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/06/29
先天性筋無力症候群
小児・神経疾患
MedGen ID
指定難病等
ガイドライン等
なし
要注意の転帰
心臓突然死
検査の保険適用
あり
概念・疫学

先天性筋無力症候群 (Congenital Myasthenic Syndromes: CMS) は、神経筋接合部に発現する遺伝子の先天的な遺伝子変異により、神経筋接合部信号伝達が障害される疾患群である。CMSでは、筋の易疲労性、持続的な筋力低下、筋萎縮が認められ、ときに日差変動を呈する症例がある。CMSの多くは2歳以下に発症する。血中抗AChR抗体、抗MuSK抗体、抗LRP4抗体が陰性であり、反復神経刺激において複合筋活動電位が10%以上異常衰退することが確定診断に重要である。CMSは、アセチルコリン受容体が欠損する「終板アセチルコリン受容体欠損症」、アセチルコリン受容体のイオンチャンネルの開口時間が異常延長する「スローチャンネル症候群」、異常短縮する「ファーストチャンネル症候群」、骨格筋ナトリウムチャンネルの開口不全を起こす「ナトリウムチャンネル筋無力症」、アセチルコリン分解酵素が欠損する「終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症」、神経終末のアセチルコリン再合成酵素が欠損する「発作性無呼吸を伴う先天性筋無力症」に分類される。25種類の遺伝子で変異が同定されている。CHRNA1、 CHRNB1、CHRND、CHRNEの機能獲得型変異によるスローチャンネル症候群、SYT2とSNAP25の変異は常染色体優性遺伝形式を示し、その他の遺伝子は常染色体劣性遺伝形式を示す。

確定診断例は世界で推定600例で、日本においては2012年に14例が報告された (臨床神経学. 1159-1161. 2012)。ただし診断困難な症例が多いため、世界中で多くの患者が未診断の状態であると推定される。

予後

進行性はないが症状は継続する。呼吸筋の筋力低下や易疲労性に伴う呼吸困難を認めることがあり、特に「発作性無呼吸を伴う先天性筋無力症」は乳児突然死症候群の原因となるため睡眠時呼吸モニタリングが必須である。嚥下障害による誤嚥性肺炎に注意が必要である。脊柱筋の脱力による脊柱側彎があり、必要に応じて手術による矯正を行う。

治療

病態に応じて有効な薬剤が存在するものがある。終板アセチルコリン受容体欠損症やファーストチャンネル症候群に対しては抗コリンエステラーゼ剤や3,4-ジアミノピリジンを使用し、終板アセチルコリンエステラーゼ欠損症やDok7筋無力症に対してはエフェドリンを使用する。また、スローチャンネル症候群に対してはキニジンやフルオキセチンを使用し、ナトリウムチャンネル筋無力症に対してはアセタゾラミドが使用される。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
CHRNA1601462N/ACMS1A (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/100690
CHRNA1608930N/ACMS1B (AD, AR)https://www.omim.org/allelicVariants/100690
CHRNB1616313N/ACMS2A (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/100710
CHRNB1616314N/ACMS2C (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/100710
CHRND616321N/ACMS3A (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/100720
CHRND616322N/ACMS3B (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/100720
CHRND616323N/ACMS3C (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/100720
CHRNE605809N/ACMS4A (AD, AR)https://www.omim.org/allelicVariants/100725
CHRNE616324N/ACMS4B (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/100725
CHRNE608931N/ACMS4C (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/100725
COLQ603034N/ACMS5 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/603033
CHAT254210N/ACMS6 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/118490
SYT2616040N/ACMS7 (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/600104
AGRN615120N/ACMS8 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/103320
MUSK616325N/ACMS9 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/601296
DOK7254300N/ACMS10 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/610285
RAPSN616326N/ACMS11 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/601592
GFPT1610542N/ACMS12 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/138292
DPAGT1614750N/ACMS13 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/191350
ALG2616228N/ACMS14 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/607905
ALG14616227N/ACMS15 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/612866
SCN4A614198N/ACMS16 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/603967
LRP4616304N/ACMS17 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/604270
SNAP25616330N/ACMS18 (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/600322
COL13A1616720N/ACMS19 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/120350
SLC5A7617143N/ACMS20 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/608761
SLC18A3617239N/ACMS21 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/600336
PREPL616224N/ACMS22 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/609557
SLC25A1618197N/ACMS23 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/190315
MYO9A618198N/ACMS24 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/604875
VAMP1618323N/ACMS25 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/185880
GMPPBN/AN/A
PLECN/AN/A
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

先天性筋無力症候群患者における各遺伝子の変異頻度はCHAT遺伝子: 4-5%、CHRNE遺伝子: 50%、COLQ遺伝子: 10-15%、DOK7遺伝子: 10-15%、GFPT1遺伝子: 2%、RAPSN遺伝子: 15-20%である。その他の遺伝子の変異頻度は1%に満たない (GeneReviewsより引用) 。

日本人での遺伝子頻度

CMSの臨床診断に至った15例のうち、12例で遺伝子変異が同定された。内訳はスローチャンネル症候群1例、ファーストチャンネル症候群1例、終板AChE欠損症 (DOK7が2例、AChRサブユニット4例、GFPT1が1例)、終板AChE欠損症3例であった (臨床神経学. 1159-1161. 2012)。他にも症例報告が散見される。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/06/29