Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/10/12
ロスムンド・トムソン症候群
腫瘍性疾患
OMIM
MedGen ID
指定難病等
ガイドライン等
なし
要注意の転帰
がん腫合併
検査の保険適用
あり
概念・疫学

ロスムンド・トムソン症候群 (Rothmund-Thomson Syndrome: RTS) は、小柄な体型、日光過敏性紅斑、多形皮膚萎縮症、骨格異常、若年性白内障を特徴とする常染色体劣性遺伝性疾患である。さらに高率にがん腫 (特に、骨肉腫、皮膚扁平上皮がん) を合併する。DNAの複製・修復に関与するヘリカーゼタンパクをコードするRECQL4遺伝子の変異によって発症する。類縁疾患としてRAPADILINO症候群、Baller-Gerold症候群があり、同じRECQL4遺伝子に病的バリアントを認める。

RTSは希少疾患で、1868年の報告以来英語文献での報告は500例に満たず、頻度は明らかになっていない。RTSは生後3-6か月に顔から出現する皮膚症状であり、2-3歳で多形皮膚萎縮症を呈する。多形皮膚萎縮症を示す疾患は他にもあるが、骨格の異常を伴った場合に、本疾患が疑われる。最終的にはRECQL4遺伝子に対する遺伝学的検査を実施し、確定診断となる。

予後

多形皮膚萎縮症があり、日光暴露により悪化するため避ける必要がある。若年性白内障の治療が繰り返し必要となり、骨欠損等の骨格異常に対しては、リハビリテーションなどが必要となる。その他、骨肉腫やがん腫の早期発見や治療を行う必要があり、生命予後はこれらの疾患による。

治療

皮膚科、眼科、整形外科、小児科などが連携して治療にあたる必要がある。皮膚病変に関しては日光暴露を避ける。皮膚萎縮症部位のレーザー治療により毛細血管の拡張は改善する。白内障に対しては外科的治療が行われる。齲歯が起きやすいため、口腔内病変を定期的にチェックする。骨格の異常に対しては、対症療法が主体となる。また骨肉腫の発症を含めた注意深い観察が必要である。定期的な検診によりがん腫の発生を早期に発見し、外科的切除、抗がん剤による治療を行う。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
ANAPC1618625N/ARTS1 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/608473
RECQL4268400N/ARTS2 (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/603780
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

RTS患者におけるRECQL4遺伝子のシークエンス解析で病的バリアントが同定される割合は~60%と報告されている。典型的なRTSの症状を有する患者の40%近くで、RECQL4遺伝子に病的バリアントが見つからないことから他の原因遺伝子の存在が示唆される (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

現時点で日本人のロスムンド・トムソン症候群における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/10/12