Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/13
ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス
腫瘍性疾患
MedGen ID
GeneReviews
なし
指定難病等
なし
ガイドライン等
なし
要注意の転帰
大腸がん及びその他がんの合併
検査の保険適用
なし
概念・疫学

ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス (Polymerase Proofreading-Associated Polyposis: PPAP) は、2種類のDNAポリメラーゼ (εとδ) をコードする遺伝子 (POLEとPOLD1) の生殖細胞系列変異によって、消化管に多発性の大腸腺腫や大腸がんを生じる常染色体優性遺伝性疾患である。これらのDNAポリメラーゼは、細胞周期S期でのDNA複製において、複製時のエラー修復機能 (校正機能) とミスマッチ修復過程の一部を担う。POLE遺伝子産物のDNAポリメラーゼεはリーディング鎖の合成に、POLD1遺伝子産物のDNAポリメラーゼδ はラギング鎖 (DNA複製に際して岡崎フラグメントとして合成される側) の合成に関わる。DNAポリメラーゼεとDNAポリメラーゼδ は共に3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有し、誤って合成に用いたヌクレオチドを加水分解して除去し、代わりに適切なヌクレオチドを挿入する機能を有する。病的変異などでPOLE及びPOLD1遺伝子の校正機能が損なわれると、細胞分裂時の異常が高率に生じて蓄積し、腫瘍の発生リスクを増加させる。PPAPにおける病的バリアントとして2つのホットスポット (POLEのp.Leu424Val及びPOLD1のp.Ser478Asn) が報告されている。POLEに病的バリアントを有している場合、70歳までに大腸がんが発生する累積リスクは男性で28%、女性で21%、POLD1に病的バリアントを有している場合では男性で90%、女性で82% と推定される。特に、POLEのp.Leu424Val変異を有している場合では、70歳までに大腸がんが発生する累積リスクは男性で97%、女性で92%と推定される。また、大腸がん発生のハザード比はPOLEの病的バリアントで12.2倍、POLD1の病的バリアントで87.2倍と推定される。ハザード比は年齢に伴って減少し、POLE変異の場合50歳未満で38.7倍、50歳以上では8.21倍、POLD1変異の場合50歳未満で201倍、50歳以上では3.34倍であった。一方で、ハザード比は性別による差はみられなかった (Genet Med. 2018. PMID: 29120461)。また、病的変異保有者での大腸がん発症リスクが高いため、(罹患家系内での病的変異保有者のうち60%程度で大腸がん発生という報告あり) サーベイランスが有用と考えられるが、PPAPで発生する大腸腺腫・大腸がんは、他の因子に起因する大腸がんと組織学的に区別がつかない。臨床的に家族性大腸腺腫症 (classical familial adenomatous polyposis) やMUTYH関連ポリーポーシス (MUTYH-associated polyposis) が疑われるものの、原因遺伝子であるAPCやMUTYHに病的変異が検出されない症例の中にはPPAPが含まれる可能性がある。そのため、PPAPの確定診断のためには遺伝学的検査が必要である。

大腸がん症例の3-5%程度が浸透率の高い生殖細胞系列変異によるものであり、さらにそのうちのごく一部がPPAPによるものと推測されているが、正確な罹患率は不明である。また、現時点で日本人のPPAP症例は報告されていないようである (日本消化器病学会雑誌.114(3): 414-421. 2017)。

予後

大腸がんの発症年齢は35-40歳の報告が多い。

大腸がん以外では、POLEとPOLD1ともに子宮内膜がんのリスクと関連しており、POLE変異は結腸がんを含む多発腫瘍、POLD1変異は乳がんや中枢神経系腫瘍のリスクとの関連もそれぞれ報告されている。

治療

大腸内視鏡を用いたサーベイランスの有効性についてのエビデンスは、まだ確立されていない。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
POLE61508310BB/9BBCRCS12 (AD)http://omim.org/allelicVariants/174762
POLD161259110BB/9BBCRCS10 (AD)http://omim.org/allelicVariants/174761
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

大腸腺腫を発症しているか、またはアムステルダム基準を満たす家族性大腸がんの患者266人を対象としたコホート研究において、POLE遺伝子にc.1270C>G;p.Leu424Valの病的バリアントが4人で検出され、そのうち3人の血縁者10人からも同じバリアントが検出された (Int J Cancer. 2015. PMID: 25529843)。

日本人での遺伝子頻度

現時点で日本人患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/13