PALB2遺伝子の機能喪失型変異による乳がんリスクの増加は、BRCA2遺伝子変異によるリスクと重複していることが報告され (N Engl J Med. 2014. PMID: 25099575)、PALB2変異陽性乳がんの存在が認識されるようになった。BRCA2遺伝子のパートナーかつローカライザーであるPALB2遺伝子は、BRCA2タンパクと相互作用しDNA修復にも関与する。PALB2変異は、常染色体優性遺伝形式をとり、乳がんの他に膵臓がんのリスク増加とも相関すると報告されている (Science. 2009. PMID: 19264984) が、PALB2遺伝子の生殖細胞系列変異の膵臓がんに対するリスクの正確な評価は確定していない。PALB2変異陽性乳がん・膵がんの正確な有病率は報告されていない。
PALB2遺伝子の病的バリアントを有する女性の33%が、70歳までに乳がんを発症すると推定されている。PALB2の病的バリアントと相関した乳がんのリスクは乳がん家族歴を有する女性でさらに大きく、その58%が70歳までに乳がんを発症すると推定される。
PALB2病的バリアント保有者の乳がんリスクへの対策について、具体的なガイドラインは策定されていない。
Gene symbol | OMIM | SQM scoring* | Genomics England PanelApp | Phenotype | Variant information |
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PALB2 | 114480 | 9CB/8CB | Breast cancer, susceptibility to (AD, SMu) | https://omim.org/allelicVariants/610355 | |
PALB2 | 613348 | N/A | Pancreatic cancer, susceptibility to, 3 | https://omim.org/allelicVariants/610355 |
BRCA1/2病的バリアント陰性の家族性乳がん患者1144人に対して、PALB2遺伝子のシークエンス解析を行ったところ、非アシュケナージ系ユダヤ人972人中33人 (3.4%) にヘテロのPALB2病的バリアントを認め、アシュケナージ系ユダヤ人172人には病的バリアントを認めなかったという報告がある (Cancer Res. 2011. PMID: 21285249)。また、家族性膵がん患者727人の0.6%にPALB2の病的バリアントを認めたという報告がある (Genet Med. 2015. PMID: 25356972)。
遺伝性乳がん・卵巣がんのリスクを持つ日本人155人において、PALB2のシークエンス解析を行ったところ、既知変異は同定されなかったが、12個のミスセンス変異 (variant with unknown significance) が同定されたという報告がある (Int J Clin Oncol. 2016. PMID: 26411315)。また家族性膵がん患者54人のうち、2人にPALB2の新規の病的バリアントを認めたという報告がある (Oncotarget. 2016. PMID: 27732944)。