Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2023/06/16
ヌーナン症候群
小児・神経疾患
MedGen ID
GeneReviews
指定難病等
要注意の転帰
合併心疾患による死亡
検査の保険適用
あり
概念・疫学

ヌーナン症候群 (Noonan Syndrome: NS) は、細胞内のRas/MAPKシグナル伝達系にかかわる遺伝子の先天的異常によって生じ、常染色体優性形式を示す。特徴的な外表奇形 (眼間開離、翼状頚、外反肘など)、先天性心疾患、心筋症、低身長、発達遅滞、胸郭異常、停留精巣、凝固異常などを示す。先天性心疾患はNS患者の50-80%に認められる。最も多いのは、形成不全を伴う肺動脈弁狭窄 (NS患者の20-50%の頻度) である。肥大型心筋症の頻度も高く (20-30%に)、RAF1遺伝子の変異例で多く認められ、出生後または乳幼児期に同定される。その他の心血管系異常としては心房中隔欠損、心室中隔欠損、肺動脈分枝狭窄、ファロー四徴が挙げられる。また、患者の約1/3に軽度の知的障害を認める。NSの診断基準としてはvan der Burgtの診断基準が一般的に用いられている。臨床症状が多岐にわたること、顔貌などの徴候は年齢と共に変化していくこと、RAS/MAPKシグナル経路に関わる遺伝子の生殖細胞系列変異によって生じる他疾患と表現型が類似することなどから、NSの臨床診断が困難な場合も多く、その際、遺伝学的検査が有用である。ただし、約40%の患者ではこれらの遺伝子に変異を認めず、他にも原因遺伝子が存在すると考えられている。

発症頻度は出生1,000-2,500人に1人とされているが、表現型が軽度な場合は見過ごされている可能性がある。

予後

主に合併する心疾患が生命予後に影響を与える。

治療

NSにおける低身長に対して、ヒト成長ホルモン (GH) 治療が承認されている。NSの合併症の治療は、心血管系異常など、個々の症状の標準的治療と同様である。

出血傾向を呈する患者では凝固因子欠乏症・血小板凝集異常のいずれも起こることがあり、原因に応じた治療が必要である。

欧米人での遺伝子頻度

NS患者における原因遺伝子の頻度は、PTPN11が50%、KRASで<5%、SOS1で10-13%、RAF1で3-17%と推定されている (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

日本人NS患者 (150人) のゲノム解析を行った結果、103人 (68.7%) に病的バリアントを認め、その内訳はPTPN11が67人、KRASが3人、SOS1が7人、RAF1が14人、BRAFが7人、SHOC2が3人、RIT1が2人という報告がある (Pediatr Res. 2016. PMID: 26650342)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2023/06/16