MUTYH 関連ポリポーシス (MUTYH-Associated Polyposis: MAP) はDNA 除去修復遺伝子の一つである MUTYH 遺伝子の異常を原因とする常染色体劣性遺伝性疾患で、ほとんどの症例で、大腸腺腫の数は100 個に満たないが、100-1000 個の場合もある。60歳までの大腸がんの浸透率はほぼ100%である。家族性大腸腺腫症と同様の随伴病変も報告されている。
MAPは全大腸がんの0.7%を占めると推測されており、少数の腺腫 (<15-20個) を持つ家族性または若年発症の大腸がんの患者集団では2%以下の頻度を占めるとの報告がある。
MAPの予後に関する一定の見解は出ていないようであるが、MAP患者では大腸がんのリスクの他に卵巣がん (診断時平均年齢は51歳)、膀胱がん (診断時平均年齢は61歳)、乳がん (診断時平均年齢は53歳)、子宮内膜がん (診断時平均年齢は51歳) のリスクが増加すると報告されている。
MAP患者の消化管腫瘍の治療は家族性大腸腺腫症 (FAP) または異型家族性大腸腺腫症に準じて行われる。
Gene symbol | OMIM | SQM scoring* | Genomics England PanelApp | Phenotype | Variant information |
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MUTYH | 608456 | 10CC/8CD | FAP2 (AR) | https://www.omim.org/allelicVariants/604933 |
APC遺伝子変異陰性の大腸腺腫症の患者において、MUTYH遺伝子の両対立遺伝子 (biallelic) に生殖細胞系列の病的バリアントを同定する頻度は大腸腺腫の数によって異なり、10-99個の場合に26%という報告がある (GeneReviewsより引用)。
APC遺伝子変異を有さない日本人の大腸腺腫症患者14人を調べたところ、3人 (21%) にヘテロ接合体のMUTYH変異を認めたという報告がある (Fam Cancer. 2016. PMID: 26684191)。