網膜芽細胞腫 (Rb) は、染色体13q14領域に存在するがん抑制遺伝子RB1の変異に起因する疾患である。10-30%は遺伝性、残りは散発性 (非遺伝性) であり、両眼性症例のほぼ全て及び片眼性症例の10-15%は遺伝性と報告され、遺伝性の場合、常染色体優性遺伝形式をとる。Rb患者の3-5%に13q14の染色体欠失を認め、75-80%はRB1遺伝子の変異であると考えられている。少数 (罹患家系の10%未満) ではあるが、表現型の浸透率が低く不完全浸透を示すケースがあり、どちらの親由来の病的バリアントかで、家系内で異なる浸透率を示す場合がある。散発性のほとんどは片眼性で、RB1遺伝子の体細胞変異 (網膜芽細胞腫生殖細胞系列には変異がないケース) が原因と考えられる。乳幼児 (通常5歳までの小児) に発症する眼内悪性腫瘍であり、胎生期網膜にみられる未分化な網膜芽細胞から発生する。白色瞳孔で気づかれることが多く、一部斜視、結膜充血、低視力などがみられる。進行すると緑内障を続発し腫瘍が眼窩まで浸潤する。放置すると全身に転移して死に至る場合もある。
Rb患児の約60%は片眼性で診断時の平均月齢は24か月、約40%は両眼性で診断時の平均月齢は15か月である。5歳までに95%が発見される。遺伝性Rbの患者においては、眼以外の腫瘍の発症リスクも増大する。Rbの頻度は1人/15,000-20,000出生児と推定され、人種差や性差は認めない。
日本では、5歳未満の小児における年間発症率は1,000,000人あたり約10-14人とされ、年間70-80人の新規発症例がある (小児慢性特定疾病情報センター)。
RB1遺伝子の異常のため、Rb患者では、他の悪性腫瘍を合併する頻度が高い。松果体腫瘍や骨肉腫が多くみられ、松果体腫瘍は通常致死的である。
転移または眼球外浸潤の場合、可能な限り腫瘍を切除し、放射線照射と全身化学療法を実施する。眼球内にとどまり、そして視力を期待できる場合、温存治療を行う。眼球内にとどまるが視力を期待できない場合、眼球を摘出する。ただし、両眼性であればできる限り軽症の方に温存治療を行う。眼球温存治療は放射線照射、化学療法、局所レザー照射、冷凍凝固に基づく。
Gene symbol | OMIM | SQM scoring* | Genomics England PanelApp | Phenotype | Variant information |
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RB1 | 180200 | 10CB/9CN (P) | RB1 (AD, SMu) | https://www.omim.org/allelicVariants/614041 |
Rb患者において、RB1遺伝子で病的バリアントを同定する割合はシークエンス解析手法で80-84%、欠失/重複解析で16-20%、マイクロアレイ法で6-8%という報告がある (GeneReviewsより引用)。
現時点で日本人網膜芽細胞腫症例における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。