Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2022/05/23
メチルマロン酸血症
小児・神経疾患
OMIM
MedGen ID
指定難病等
要注意の転帰
急性代謝不全
腎不全
検査の保険適用
あり
概念・疫学

メチルマロン酸血症 (Methylmalonic Acidemia: MMA) は、メチルマロニルCoAムターゼ (MCM) の活性低下によってメチルマロン酸をはじめとする有機酸が蓄積し、代謝性アシドーシスに伴う各種の症状を呈する疾患である。メチルマロニルCoAの代謝障害をきたす原因としては、(1) MCM 欠損症 (MIM#251000) と、(2) MCMの補酵素であるビタミンB12 (コバラミン) の摂取・腸管での吸収・輸送から、活性型補酵素アデノシルコバラミン (コバマミ) 合成までの諸段階における障害が知られている。後者のコバラミン代謝異常は、相補性解析からcblA-cblGに分類され、cblA、cblBはアデノシルコバラミン合成だけに障害をきたしてMCM欠損症と同様の症状を呈するのに対し、cblC、cblE、cblF、cblGはメチオニン合成酵素に必要なメチルコバラミンの合成に共通する経路の障害でホモシステイン増加を伴い、臨床像を異にする。またcblDは、その責任分子MMADHCが、cblCの責任分子MMACHCによる修飾を受けたコバラミン代謝中間体の細胞内局在 (ミトコンドリア又は細胞質) の振り分けを担っており、遺伝子変異の位置によって、MMA単独型/ホモシスチン尿症単独型/混合型に分かれる。いずれも常染色体劣性遺伝性疾患である。国内での頻度は1/120,000人 (新生児タンデムマス・スクリーニング) で、発症後診断例の全国調査では、メチルマロン酸血症が国内最多の有機酸代謝異常症と報告されている。

予後

早期発症の重症例の予後は不良である。これらの症例を中心として、生体肝移植が試みられている。食欲の改善、食事療法の緩和、救急受診・入院の大幅な減少などQOLが向上する症例もあるが、肝移植後にもかかわらず急性代謝不全や中枢神経病変の進行などが生ずることもある。 腎機能低下は長期生存例における最も重大な問題のひとつであり、たとえ肝移植によって全般的な代謝コントロールが改善しても腎組織障害は進行し、末期腎不全に至りうる。

治療

診断確定後の治療として、(1) ビタミンB12反応性MMAの可能性を考慮して、ヒドロキソコバラミン又はシアノコバラミン10mg/日の内服を開始する。投与前後の血中アシルカルニチン分析・尿中有機酸分析で効果の有無を判定する。(2) 食事療法として、母乳や一般育児用粉乳にバリン・イソロイシン・メチオニン・スレオニン・グリシン除去ミルクを併用して、軽度のタンパク摂取制限 (1.5-2.0g/kg/日) を開始する。急性期、急性増悪時には、気管内挿管と人工換気、ブドウ糖を含む輸液、代謝性アシドーシスの補正、水溶性ビタミン投与、高アンモニア血症の薬物療法、血液浄化療法などが必要となる。

Genes
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

MMA患者において、MUT遺伝子変異によるものが60%、MMAA遺伝子変異によるものが25%、MMAB遺伝子によるものが12%であり、各遺伝子でシークエンス解析手法により病的バリアントを同定する割合は96-98%と報告されている (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

日本人のMMA患者29名においてMUT遺伝子解析を行ったところ、95% (55/58) に病的バリアントを同定したという報告がある (J Hum Genet. 2007. PMID: 17075691)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2022/05/23