Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/13
リンチ症候群
腫瘍性疾患
MedGen ID
GeneReviews
指定難病等
なし
要注意の転帰
多発消化菅腫瘍
検査の保険適用
なし
概念・疫学

リンチ症候群 (Lynch Syndrome) は、ミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異を原因とする常染色体優性遺伝性疾患である。患者とその家系内では、大腸がん、子宮内膜、卵巣、胃、小腸、肝胆道系、泌尿生殖器系のがん、脳及び皮膚がんのリスクが上昇する。リンチ症候群と遺伝性非ポリポーシス大腸がん (Hereditary Non-Polyposis Colorectal Cancer: HNPCC) は同一疾患である。診断の流れとしては、腫瘍組織のマイクロサテライト不安定性 (MSI) 検査、あるいは原因遺伝子産物に対する免疫組織学的検査を行い、高頻度MSIまたは免疫染色でのミスマッチ修復タンパク消失が確認された場合、ミスマッチ修復遺伝子の遺伝学的検査を行う。生殖細胞系列におけるミスマッチ修復遺伝子の病的バリアントが同定された場合に確定診断となる。

リンチ症候群は全大腸がん症例の1-3%を、全子宮内膜がんの0.8-1.4%を占め、有病率は1:440である。

予後

リンチ症候群患者のがん罹患リスクは、大腸がんが52-82% (診断時年齢は44-61歳)、胃がんが6-13% (診断時平均年齢56歳)、卵巣がんが4-12% (診断時平均年齢42.5歳、うち約30%は40歳以前に診断) である。

治療

大腸がんが発見された場合、回盲部を含む全大腸内視鏡検査を行い、最適な手術療法の選択を行う。リンチ症候群で認められる大腸以外のがんは非リンチ症候群の場合と同様に管理する。「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性 (MSI-High) を有する固形がん (標準的な治療が困難な場合に限る)」において、抗PD-1抗体ペムブロリズマブでの治療が可能となった。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
MSH212043510AA/9AB/8AAHNPCC1 (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/609309
MLH160931010AA/9AB/8AAHNPCC2https://www.omim.org/allelicVariants/120436
PMS261433710AA/9AB/8AAHNPCC4https://www.omim.org/allelicVariants/600259
MSH661435010AA/9AB/8AAHNPCC5 (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/600678
TGFBR2614331N/AHNPCC6https://www.omim.org/allelicVariants/190182
MLH3614385N/AHNPCC7https://www.omim.org/allelicVariants/604395
EPCAM61324410AA/9AB/8AAHNPCC8https://www.omim.org/allelicVariants/185535
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

シークエンス解析または欠失/挿入解析により、リンチ症候群患者で病的バリアントが同定される頻度は、MLH1が50%、MSH2が40%、MSH6が7-10%、PMS2が<5%、EPCが1-3%と報告されている (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

日本人の大腸がん患者1,234人の中から、ミスマッチ修復遺伝子の免疫組織化学的スクリーニングの後、11人が遺伝学的検査へと進み、そのうち9名がリンチ症候群と診断された (MLH1変異を1名、MSH2変異を4名、EPCAM変異を1名、MSH6変異を3名に認めた) という報告がある (Jpn J Clin Oncol. 2017. PMID: 27920101)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/13