Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2023/03/09
ロイス・ディーツ症候群
MedGen ID
指定難病等
要注意の転帰
大動脈解離
妊娠時合併症
検査の保険適用
あり
概念・疫学

ロイス・ディーツ症候群 (LDS) は、TGFBR遺伝子を代表とする、TGF-βシグナル伝達経路に関与する遺伝子に生じた生殖細胞系列病的バリアントによる遺伝性結合組織疾患として新規に提唱された疾患であり、遺伝形式は常染色体顕性遺伝を示す。大動脈病変を主に、心血管系、骨格系、皮膚他にも特徴的な症状を伴う。大動脈瘤・解離、動脈蛇行などの血管病変は、ほとんどの症例で認められる。罹患者の約75%は、特徴的顔貌 (眼間解離、二分口蓋垂・口蓋裂、頭蓋骨早期癒合症) を呈するLDS1型であり、約25%は特徴的皮膚所見 (ビロード状で透過性の高い皮膚、アザができやすい、広範で萎縮性の瘢痕) を呈するLDS2型である。LDS1型とLDS2型は明確に分類されているわけではなく、臨床像としては一連のものである。臨床所見や家族歴より同疾患が疑われる場合には、遺伝学的検査で診断を確定する。

LDSの有病率は不明であり、民族間あるいは人種間の差、性差については報告されていない。

予後

LDSの自然歴では、若年進行性の広範な動脈瘤 (平均死亡年齢は26.1才) と高率の妊娠時合併症 (周産期死亡、子宮破裂) に注意する必要がある。その他、生命予後に関わる症状としては、脾臓や腸管の自然破裂などがある。

治療

大動脈瘤、慢性大動脈解離に関しては、内科的に降圧剤による血圧コントロールが行われるが、大動脈弁閉鎖不全 (逆流)、急性大動脈解離、解離の予防に関しては、大動脈弁置換術、大動脈置換術などの外科的治療が選択される。外科的治療法は人工血管置換術が基本であり、一般には上行瘤は径5.5cm以上、下行瘤では径6cm以上の場合適応とされるが、遺伝性大動脈疾患であるLoeys-Dietz症候群では>=40mmとより早期の介入が推奨される。Loeys-Dietz症候群などの遺伝性結合織異常に発生したA型解離においては、entryが上行大動脈に存在していても、上行・hemiarch置換を行った後の慢性期に弓部大動脈以下の拡大が認められることが多いことから全弓部置換の適応となる。逆に高齢や脳梗塞既往、再手術例では手術危険度を勘案した手術時期の決定がなされる。内科的には降圧薬治療となるが、下行瘤ではβブロッカーの有用性が示されている。口蓋裂、斜視、頭蓋骨早期癒合に対しては、外科的修復を行い、頸椎不安定症、側彎症、内反足に対しては固定術あるいは整形外科的修復を行う。

欧米人での遺伝子頻度

シークエンス解析または欠失/挿入解析により、LDS患者で病的バリアントが同定される遺伝子頻度は、TGFBR1が20-25%、TGFBR2が55-60%、SMAD3が5-10%、TGFB2が5-10%、TGFB3が1-5%と報告されている (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

現時点で日本人LDS症例における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2023/03/09