Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2022/06/06
リ・フラウメニ症候群
腫瘍性疾患
OMIM
MedGen ID
指定難病等
ガイドライン等
なし
要注意の転帰
多発がん
検査の保険適用
なし
概念・疫学

リ・フラウメニ症候群 (LFS) は、家族性にがんを多発する遺伝性疾患の一つで、TP53遺伝子の異常による常染色体優性遺伝形式をとる。古典的LFSと、その類縁症候群であるリ・フラウメニ様症候群 (LFL) の二つの病型が知られており、以下のような臨床診断基準に基づいて診断される。(1) 古典的LFSの定義:発端者が45歳以前に肉腫と診断され、かつ一度近親者に45歳未満に診断されたがん患者があり、かつ一度もしくは二度近親者に45歳未満のがん患者あるいは年齢を問わない肉腫患者がある。(2) リ・フラウメニ様症候群の定義:一度もしくは二度近親者の2人に、年齢を問わずLFS関連悪性腫瘍 (肉腫、乳がん、脳腫瘍、副腎皮質がん、または白血病) を有する患者がある。

LFSは、かつては珍しい遺伝性がん症候群と考えられていたが、最近のデータでは生殖細胞系列のTP53の病的バリアントを保有している頻度は5,000-20,000人に1人と推定されている。日本では、50家系近くのLFSとLFLが確認されているが、実際には未診断のLFS家系が相当数あるものと推測されている (日本臨床. 73巻. 162-166. 2015)。

【遺伝子変異の出現率】

LFSの特徴を示す家系の50-80%でTP53遺伝子の生殖細胞系列変異が検出される。また、一般人口におけるTP53遺伝子の病的バリアントの頻度は、米国で5,000-20,000人に1人、英国で10,000-25,000人に1人と推定される (CliGenより)。

【浸透率 (リスクの高い人種や民族のサブグループを含める)】

70歳までの推定累積罹患率は、

(女性)乳がん:54%、軟部肉腫:15%、脳腫瘍:6%、骨肉腫:5%

(男性)軟部肉腫:22%、脳腫瘍:19%、骨肉腫:11%

生涯がん発症リスクは女性でほぼ100%、男性で73%という報告もある (ClinGenより)。

【表現型の発現度】

LFSのがん発症年齢は幅広く、様々な部位において多様な悪性腫瘍を発症する (ClinGenより)。

予後

LFSの患者は、一般より若年齢でがんを発症するリスクが高く、その発症率は30歳までに50%、60歳までに90%以上と報告されている。またLFSは多発性に原発がんを生じるリスクも高く、2種のがんを発症するリスクは57%、3種のがんを発症するリスクは38%と推測されている。中心的ながんは、軟部組織肉腫、骨肉腫、閉経前乳がん、脳腫瘍、副腎皮質がんであり、これらが、LFS関連腫瘍全体の約80%を占める。

治療

LFS関連腫瘍は放射線治療を最小限にとどめて、通常のがん治療を行う。ただし、乳がんの場合は、放射線治療を回避する目的で、乳腺腫瘍摘出術よりも乳房切除術が推奨されている。またTP53遺伝子の病的バリアントを有する女性に対しては、予防的乳房切除術も選択肢の一つとなっている。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
TP53151623LFS (AD)https://omim.org/allelicVariants/191170
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

LFS家系の約80%において、TP53遺伝子の病的バリアントが同定され、de novo変異の頻度は7-20%であると報告されている (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

全国がん治療施設アンケート調査などの結果と文献検索を合わせ、39家系にTP53の病的バリアントを検出した。病的バリアントを有する50名から発症した93件のがんを解析し、変異部位はDNA結合部位でのミスセンス変異が圧倒的に多かった (家族性腫瘍. 14. A36. 2014)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2022/06/06