Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2023/06/16
基底細胞母斑症候群
腫瘍性疾患
OMIM
MedGen ID
指定難病等
ガイドライン等
なし
要注意の転帰
複数がん腫発生
検査の保険適用
なし
概念・疫学

基底細胞母斑症候群 (Basal Cell Nevus Syndrome: BCNS、別名、Gorlin症候群) は、発達上の奇形と遺伝性高発がん性を併せ持つ神経皮膚症候群であり、別名、母斑基底細胞がん症候群、基底細胞母斑症候群などとも呼ばれる。発達上の奇形には手掌・足底皮膚小陥凹、二分肋骨ないし癒合肋骨、椎骨異常、顎骨嚢胞、大脳鎌石灰化があり、大脳鎌石灰化は20歳までに患者の90%超に認め、角化嚢胞は10歳代から発症し始める場合が多い。高発がん性には基底細胞がん、髄芽腫、卵巣腫瘍の発生がよく知られており、基底細胞がんは通常20歳代以降に生じる。基底細胞母斑症候群の患児のうち、約5%が髄芽腫 (未分化神経外胚葉性腫瘍: PNET) を発症し、髄芽腫は多くの場合線維形成性であり発症のピークは2歳時である。また心線維腫を患者の約2%に、卵巣線維腫を約20%に認める。基底細胞母斑症候群患者の大部分には特徴的な顔貌がみられるが、臨床診断には頭囲の測定や基底細胞がん、母斑、稗粒腫、足底や手掌の痘痕の有無の確認が必要となる。基底細胞母斑症候群の平均余命は一般人口平均と大差ない。

疾患頻度は、イングランド北西部の4,000,000人の英国人集団に関する研究から、57,000人中1人 (Br J Cancer. 1991. PMID: 1931625)、その後30,827人中1人近くにまで引き上げられ、そして出生時発症率が最大18,976人中1人にのぼることが確認された (Am J Med Genet A. 2010. PMID: 20082463)。日本国内では、2009年の厚生労働省難治性疾患克服研究事業でGorlin症候群の全国一次調査が行われ、300人を超える患者が確認された。有病率は少なくとも235,800人に1人と推定されている。

予後

基底細胞母斑症候群の平均余命は、一般人口平均と大差ないと報告されている (J Med Genet. 2012. PMID: 22362873)。

治療

症状に応じた治療を行う。基底細胞がんに対しては悪性度の高い基底細胞がんを根絶し、外科的切除の補完治療として早期病変に対する凍結療法やレーザー治療、光線力学的療法などが行われる。近年、基底細胞がんと髄芽腫に対する分子標的薬が開発され、米国で臨床試験が進行中である。今後はこうした新薬など、新しい治療法の発展が期待される。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
PTCH1109400BCNS1 (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/601309
SUFU620343N/ABCNS2https://www.omim.org/allelicVariants/607035
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

典型的な基底細胞母斑症候群の臨床所見を有する患者の50-85%でPTCH1遺伝子の病的バリアントが検出できる。多発性の基底細胞がんを除いて、症状がない患者や家系メンバーでPTCH1変異が検出される可能性は非常に低い (Genet Med. 2005. PMID: 16301862, Hum Mutat. 2005. PMID: 16088933)。

日本人での遺伝子頻度

日本人の基底細胞母斑症候群の6家系を調べたところ、全ての家系においてPTCH1遺伝子の病的バリアント (ナンセンス変異1、1-2bpの欠失、 58bpの重複1、1.2Mbの欠失1) を認めたという報告がある (J Hum Genet. 2009. PMID: 19557015)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2023/06/16