Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/10/12
血友病A/B
小児・神経疾患
MedGen ID
指定難病等
なし
要注意の転帰
出血エピソード
検査の保険適用
なし
概念・疫学

血友病A/B (Hemophilia A/Hemophilia B: HEMA/HEMB) はX連鎖遺伝形式を示す先天性出血素因であり、約10,000人の出生に1人生まれる。血友病の原因は、血液凝固第VIII因子 (FVIII) (血友病A) または第IX因子 (FIX) (血友病B) の欠乏であり、そのために外傷、抜歯、もしくは手術後に毛細血管性出血が延長したり、創傷治癒での止血遅延や再出血が起こる。出血エピソードの診断年齢と頻度は各欠乏因子の凝固活性値と相関している。ヘテロ接合体女性の約3割は凝固活性が40%を下回り、出血のリスクを持つ。血友病Aでは第VIII因子活性の低下 (第VIII因子活性<40%)、血友病Bでは第IX因子活性の低下 (第IX因子活性<40%) が確定診断のための検査となる。

全世界での血友病Aの男児出生率は6,500人の出生あたり1人であり、血友病Bの男児出生率は約20,000人の出生あたり1人である。罹患男児出生率は国や民族にかかわらず同程度であるが、その原因は血友病Aの原因遺伝子であるF8、血友病Bの原因遺伝子であるF9の自然突然変異率がともに高く、両遺伝子がX染色体上にあるためと推測されている。30%近くの罹患男性は血友病Aの家族歴を持たず、そのような場合、新規 (de novo) 変異の発生を考慮する必要がある。

全世界の患者数は約400,000人と推定される。血友病Aは血友病Bよりも多く、血友病全体の 80-85%を占める。 2011年度の「血液凝固因子異常症全国調査」によると、国内では血友病Aが4,475人 (男性4,446人、女性29人)、血友病Bが971人 (男性958人、女性13人) 確認されている。未報告の患者を合わせると、発症頻度は男性10,000人あたりに0.8-1人と推測される。

予後

血友病患者の寿命は、現在行われている適切な治療を受けられれば、非罹患者と同等である。

治療

出血予防が治療の最終目標であり、出血エピソードに対して、血友病Aでは第VIII因子濃縮製剤、血友病Bでは第IX因子濃縮製剤の静脈内投与を行う。合成バソプレシン類似体であるデスモプレシン (DDAVP) は、軽症-中等症の血友病AにおいてVIII因子活性を上昇させ得る。侵襲を伴う処置の前には必ず当該製剤による補充療法またはデスモプレシンを投与して、凝固因子を適切なレベルに上昇させる必要がある。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
F83067009CBHEMA (XLR)https://www.omim.org/allelicVariants/300841
F93069009CBHEMB (XLR)https://www.omim.org/allelicVariants/300746
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

F8遺伝子のイントロン22-A逆位は、重症血友病Aを有する家系の約半数に同定される。血友病Aのシークエンス解析では、重症発端者の43%、軽症-中等症発端者の76-99%にF8遺伝子の病的バリアントが認められる。一方、血友病Bのシークエンス解析では、罹患男性の100%以下、保因者女性の97%にF9遺伝子の病的バリアントが認められる。ただし血友病B罹患男性では体細胞モザイクのため、変異検出率が低下することがある (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

現時点で日本人での血友病患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/10/12