Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/09/25
家族性地中海熱
OMIM
MedGen ID
指定難病等
要注意の転帰
心膜炎
アミロイドーシス
検査の保険適用
あり
概念・疫学

家族性地中海熱 (Familial Mediterranean Fever: FMF) は、炎症経路のひとつであるインフラマソームの働きを抑えるパイリンの異常で発症する自己炎症性疾患である。MEFV遺伝子が疾患関連遺伝子として知られているが、発症には他の因子も関与している可能性がある。発作性の発熱 (典型例では月に1回程度繰り返す)、随伴症状として漿膜炎による激しい疼痛を特徴とし、2つの病型 (FMF1型とFMF2型) に分類される。FMF1型の特徴は反復性の短期間の炎症・漿膜炎発作であり、発熱・腹膜炎・滑膜炎・胸膜炎を伴い、稀に心膜炎や髄膜炎を伴う。症状とその重症度は患者ごとに異なり、同一家系内でも様々な場合がある。腎不全に至るアミロイドーシスが最も重症の合併症である。FMF2型は、他の症状のない患者に最初の臨床徴候として現れるアミロイドーシスが特徴である。典型例は5歳以下の発症が少なく、成人発症例が比較的多い。明らかな性差はなく、主に常染色体劣性遺伝形式を呈する。特徴的な周期性発熱発作に加え、漿膜炎、滑膜炎などの随伴症状を認めるか、コルヒチンによる発作の改善を認める場合、FMF典型例と診断される。

FMFは地中海地域住民、とくに北アフリカ系ユダヤ人・アルメニア人・トルコ人・アラブ人に多く見られ、わが国ではおよそ500人の患者が存在すると推定されている。

予後

無治療で炎症が反復するとアミロイドーシスを合併することがある。

治療

根治療法はなく、副腎皮質ステロイド薬は無効であり、発作の抑制にはコルヒチンが90%以上の症例で奏効する。コルヒチンの無効例では高IL-1療法 (カナキヌマブ) やTNFα阻害剤 (インフリキシマブ、エタネルセプト)、サリドマイドなどが有効であると報告されている。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
MEFV24910010CA/9CBFMF (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/608107
MEFV1346106DCFMF (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/608107
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

MEFV遺伝子のシークエンス解析により、発端者の75-90%で病的バリアントが認められる。ただし、25%以下の患者では1個の病的バリアントのみ同定されるという報告がある (Arthritis Rheum. 2009. PMID: 19479871, J Hum Genet. 2010. PMID: 20485448)。

日本人での遺伝子頻度

日本人のFMF患者192人に関してMEFV遺伝子解析を行ったところ、181人 (94%) が少なくとも1つの病的バリアントを有していたという報告がある (Arthritis Res Ther. 2016. PMID: 27473114)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/09/25