第一度近親者 (親、兄弟姉妹、子) に膵がんが2人以上いる場合を家族性膵がん (Familial Pancreatic Carcinoma: FPC) という。家族性膵がんは膵がん全体の5-10%を占め、わが国では日本人のコホート調査において6.9%であったと報告されている (Pancreas. 2011. PMID: 21487321)。膵がんの発生リスクは、近親者の膵がん症例が多いほど高く (第一度近親者に1人: 4.5倍、2人: 6.4倍、3人: ≧32倍)、若い膵がん症例がいる家系では高いことが報告されている。 遺伝性乳がん卵巣がん症候群、膵臓がん・悪性黒色腫症候群、ポイツ・イェガース症候群、PALB2変異陽性乳がんは家族性膵がんのリスクを増大させ、いずれも、常染色体顕性遺伝性疾患である。BRCA2変異陽性の個人が膵がんを患うリスクは通常の3-10倍 (膵がんに罹る生涯リスクは5%) であり、膵がん・悪性黒色腫症候群患者が膵がんに罹るリスクは通常の20-30倍 (生涯リスクは10-16%)、ポイツ・イェガース症候群患者が膵がんに罹るリスクは通常の100倍 (生涯リスクは60歳までに36%) となる。(<http://www.pancan.jp/index.php?option=com_content&view=article&id=361: 膵がん研究の最前線: 遺伝子と家族性膵がんについて&catid=113&Itemid=624>より抜粋)。膵がん発症の背景にどのような遺伝子変異があるのかが判明しているのは家族性膵がん全体の20%に過ぎない (World J Gastroenterol. 2017. PMID: 28246467)。また、家族性膵がんと散発性膵がんには体細胞変異、膵がんの発生部位、症状、画像的所見、ステージ、病理所見等に明らかな違いがないため、第一度近親者における2名以上の膵がん家族歴の有無を確認することが、家族性か散発性かを区別する方法である。膵がんは初期症状に乏しく、症状出現時には浸潤・転移を伴う進行膵がんである場合が多い。そのため、膵がんの予後改善には早期発見が重要であり、家族性あるいは遺伝性に膵がんリスクの高い集団の拾い上げとスクリーニング検診が重要である。
家族性膵がんの予後調査に関するまとまった結果は見当たらないようである。
家族性膵がんや家系内に乳がん・卵巣がんを認める膵がん、生殖細胞系列遺伝子のBRCAバリアントを有する膵がんでは、その他の膵がん症例に比べて、プラチナ製剤やPARP阻害薬の奏効率が高いことが報告されている。
Gene symbol | OMIM | SQM scoring* | Genomics England PanelApp | Phenotype | Variant information |
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PALLD | 606856 | N/A | PNCA1 (AD) | https://www.omim.org/allelicVariants/608092 | |
BRCA2 | 613347 | N/A | PNCA2 | https://www.omim.org/allelicVariants/600185 | |
PALB2 | 613348 | N/A | PNCA3 | https://www.omim.org/allelicVariants/610355 | |
BRCA1 | 614320 | N/A | PNCA4 | https://www.omim.org/allelicVariants/113705 | |
CDKN2A | 606719 | Melanoma-pancreatic cancer syndrome (AD) | https://www.omim.org/allelicVariants/600160 |
521例の家族性膵がん発端者において、生殖細胞系列に病的バリアントが同定される頻度はBRCA1遺伝子が1.2%、BRCA2遺伝子が3.7%、PALB2遺伝子が0.6%、CDKN2A遺伝子が2.5%という報告がある (Genet Med. 2015. PMID: 25356972)。
日本人の家族性膵がん患者88人において、3人にBRCA2遺伝子、2人にPALB2遺伝子の病的バリアントを認めたという報告がある (J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2013. PMID: 23604538)。