Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/13
遺伝性乳頭状腎細胞がん
腫瘍性疾患
OMIM
MedGen ID
GeneReviews
なし
指定難病等
なし
ガイドライン等
要注意の転帰
がん転移
検査の保険適用
なし
概念・疫学

遺伝性乳頭状腎細胞がん (Hereditary Papillary Renal Cancer: HPRC) は、両側性及び多病巣性の1型乳頭状腎細胞がん (Papillary Renal Cell Carcinoma: PRCC) を発症させやすい常染色体優性の遺伝性症候群である。METがん原遺伝子の生殖細胞系列の活性化病原性変異はHPRC疾患感受性に関連している。HPRCに関する既知の主要な危険因子は、両側性・多病巣性PRCCを患った生物学的近親者及び/またはMETがん原遺伝子のチロシンキナーゼ領域における既知の活性化病原性変異である。発症の平均年齢は42歳である。発症時年齢は家族間で大きく異なり (19-66歳)、それは遺伝子型の影響を受けている可能性が推察されている。浸透率は約100%と高い。HPRCでは男女とも同様に罹患する。下記 (1) - (3) のうち、1つ以上が認められる場合、HPRCの遺伝学的検査が推奨される。(1) HPRCの家族歴がある場合、(2) METのチロシンキナーゼ領域における病原性多様体が陽性と判明した家系員がいる場合、(3) 1つ以上のPRCC、腎実質周囲に初期病変を認めるPRCC、または45歳前に診断されたPRCC。 有病率に関する明確な調査結果は存在しないようであるが、北米の2つのHPRC大家族において、MET遺伝子の病的バリアントに関する創始者効果 (共通の祖先由来によるもの) が示唆されている。すなわち、2つの家族の罹患メンバーは、MET遺伝子内及び少し離れた位置に同じハプロタイプを共有していたことを手掛かりに、MET遺伝子のエクソン16に新たな病的バリアントが同定された (Cancer Res. 1998. PMID: 9563489)。一方、この共通の祖先由来のハプロタイプを共有せずに、MET遺伝子における同一の生殖細胞系列病的バリアントを有する家族も報告されている (J Urol. 2004. PMID: 15371818)。

予後

HPRC関連の1型PRCC、特に腎に限局する小さい腫瘍は緩慢な経過をたどる傾向がある。その結果、患者は人生の後半で発症するか、腎腫瘍の診断前に同疾患とは無関係な他の原因により死亡する。HPRCのリスクがある個人のサーベイランス及び症状発現前のスクリーニングは予後を改善でき、専門的ながん管理が同疾患の転帰を改善すると期待されている。

治療

通常、HPRCの腫瘍サイズが3cmに達した場合、転移による拡がりのリスクを最小限に抑えるため、ネフロン温存腎部分切除術が推奨される。MET/VEGFR2両キナーゼの阻害薬で、他のさまざまなチロシンキナーゼに対しても追加的な活性を持つ抗がん剤、foretinibの、転移性PRCCまたは両側性・多病巣性PRCCの患者に対する有効性が、多施設第II相試験で評価された。PRCC患者全体の奏効率は13.5%であったが、後方視的解析により、METの生殖細胞系列変異を有する患者では同抗がん剤への感受性が特に高かった。患者10人中5人 (50%) がResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors (RECIST) 基準での部分奏効を示したのに対し、METの生殖細胞系列変異を有しない患者で部分奏効を示したのは57人中わずか5人 (9%) であった。現在、PRCCに対して、より選択的なMET阻害薬が研究段階にある。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
MET60507410CNRCCP1https://www.omim.org/allelicVariants/164860
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

161人のPRCC患者に関する包括的ゲノム解析により、17人 (11%) にMET遺伝子の病的バリアントを認め、そのうち3つは生殖細胞系列の病的バリアントであったという報告がある (N Engl J Med. 2016. PMID: 26536169)。

日本人での遺伝子頻度

現時点で日本人でのMET遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/13