Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2023/05/17
家族性若年糖尿病 (MODY3)
OMIM
MedGen ID
指定難病等
要注意の転帰
心血管系合併症
検査の保険適用
なし
概念・疫学

家族性若年糖尿病 (Maturity-Onset Diabetes of the Young: MODY) は、膵β細胞の機能異常により若年でインスリン分泌不全型の糖尿病を発症する。現在までに14種類の原因遺伝子と病型 (MODY1-14) が報告されており、遺伝形式は常染色体顕性遺伝を示す。病型によって耐糖能異常の重症度は多様であり、遺伝学的検査で病型を確定することにより、予後推定や適切な治療選択が可能になる。また糖尿病以外にも、原因遺伝子が発現している種々の組織に関連した様々な臨床像を呈することがある。

MODYは糖尿病全体の1-3%程度と推定されている (Diabetologia. 2010. PMID: 20499044; J Clin Endocrinol Metab. 2013. PMID: 23771925; Diabetes Care. 2016. PMID: 27271189)。MODYのなかで、転写因子のHNF1Aを原因遺伝子とするMODY3が占める割合は、人種によらず大きく (30-65%) (J Clin Endocrinol Metab. 2013. PMID: 23771925; Diabetes. 1997. PMID: 9075818; Eur J Hum Genet. 2005. PMID: 15657605; Diabetologia. 2001. PMID: 11692182; Eur J Hum Genet. 2005. PMID: 15657605)、学校検尿が発見契機となることが多い。日本人ではMODY3がおよそ40%を占め (J Diabetes Investig. 2018. PMID: 29406598)、10歳前後で診断されることが多い (Diabet Med. 2014. PMID: 24905847)。MODYの浸透率は高く、25歳までに63%、35歳までに78.6%、55歳までに95.5%が糖尿病を発症するとの報告 (Diabet Med. 2001. PMID: 11472455) がある (GeneReviewsより)。

なお、日本人MODYで複数家系による再現性が認められているのはMODY1、2、3、5、6である (Horikawa, 糖尿病62(8). 2019)。

予後

慢性の高血糖による合併症は2型糖尿病と共通であるが、MODY3では肝臓での脂質代謝異常により心血管イベントのリスクが増大することが示唆されている。

治療

根治的治療法は存在せず、糖尿病と血管合併症については一般の糖尿病と同様の治療が行われる。MODY3の軽症例にスルフォニルウレア剤が有効で、少量から開始するのが望ましい。ただし、インスリン分泌能が悪化する場合には、インスリン治療も考慮される。また、HNF1A遺伝子の病的バリアントは肝がん発生のファーストヒットとなりうるため、診断後は肝臓の定期検査も必要である。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
HNF1A600496MODY3 (AD)https://www.omim.org/allelicVariants/142410
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

MODY疑いの96人の患者を調べたところ、39人 (41%) でMODY関連遺伝子内に病的と考えられるバリアントが同定され、そのうちの15変異がHNF1A遺伝子に認められたという報告がある (Can J Diabetes. 2016. PMID: 27634015)。

日本人での遺伝子頻度

18歳以下発症の非肥満性糖尿病の日本人患者84人においてHNF1A、HNF4A、HNF1Bの遺伝子解析を行ったところ、3人 (4%) にHNF1Aの既知の病的バリアントを認めたという報告 (J Pediatr Endocrinol Metab. 2006. PMID: 16562587)、及び30歳以下発症のインスリン非依存性糖尿病の日本人患者83人においてHNF1A遺伝子解析を行ったところ、7人 (8%) に病的バリアントを認めたという報告がある (Diabetes. 1997. PMID: 9287053)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2023/05/17