Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2023/03/17
家族性副甲状腺機能亢進症 (MEN以外)
MedGen ID
指定難病等
なし
要注意の転帰
副甲状腺がん
検査の保険適用
なし
概念・疫学

家族性副甲状腺機能亢進症の多くは多発性内分泌腫瘍症1型 (Multiple Endocrine Neoplasia Type 1: MEN1) によるものであるが、MEN1以外の家族性副甲状腺機能亢進症 (HRPT1/2) には、副甲状腺機能亢進症顎腫瘍症候群 (HPT-JT)、家族性孤発性副甲状腺機能亢進症 (FIHP)、家族性低カルシウム尿性副甲状腺機能亢進症 (FHH) がある。HPT-JTは副甲状腺の腺腫あるいはがん、下顎腫瘍 (腺腫)、腎の多発嚢胞やWilms腫瘍、子宮病変を主徴とする常染色体顕性遺伝性疾患で、その原因遺伝子はCDC73である。確定診断はCDC73遺伝子に対する遺伝学的検査によってなされる。HPT-JTのほぼ全例に副甲状腺機能亢進症が認められ、副甲状腺腫瘍は4腺中の1~2腺に発生することが多い。副甲状腺機能亢進症発端者が若年発症で、臨床的にMENの可能性が低く、副甲状腺腫瘍摘出後に再発、顎腫瘍や腎腫瘍などを合併している場合はHPT-JTを強く疑う。FIHPは、家族性に副甲状腺機能亢進症のみが認められる疾患で、1~2腺の副甲状腺腺腫あるいはがんを発生する常染色体顕性遺伝性疾患である。FIHPでは、MEN1、CDC73、CASR遺伝子などに病的バリアントが見られる。FHHは尿中カルシウム低下と軽度の高カルシウム血症を呈する常染色体顕性遺伝性疾患である。カルシウム受容体をコードするCaSR遺伝子変異によりカルシウム受容体が不活化し、代償的にPTH過剰分泌とカルシウム上昇、カルシウム排泄量の低下がおきる。副甲状腺の単腺あるいは多腺性腫大を呈することがある。HPT-JTやFIHPの有病率に関する現時点での報告は見当たらないが、MEN1の罹病率 (約30,000人に1人) よりは低いと推測されている。

予後

70-95%のHPT-JT患者に、副甲状腺機能亢進症が認められ、年齢とともに有徴候者の割合は上昇する。ほとんどの症例では単発の良性副甲状腺腺腫が認められるが、10-15%で副甲状腺がんが発症する。

治療

副甲状腺腫瘍に対しては外科的切除の適応となるが、術式 (腫大腺のみを摘出するか全腺を摘出するか) についてはまだ統一見解がない。HPT-JTに合併した顎腫瘍の治療法は外科的切除であり、有効な薬剤はまだ知られていない。FHHは臨床的に問題となる症候が出現することは稀であり手術を含めた治療適応がない。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
CDC7314500011CC/9CC/8CCHRPT1 (AD)https://omim.org/allelicVariants/607393
CDC7314500111CC/9CC/8CCHRPT2 (AD)https://omim.org/allelicVariants/607393
CASR239200N/AHyperparathyroidism, neonatal (AD, AR)https://omim.org/allelicVariants/601199
GCM2617343N/AHRPT4 (AD)https://omim.org/allelicVariants/603716
TRPV6618188N/AHyperparathyroidism, transient neonatal (AR)https://omim.org/allelicVariants/606680
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

CDC73遺伝子の病的バリアントは、FIHP家系の約7%、一見散発性の副甲状腺がんの20-29%、一見散発性に見える若年発症 (<45歳) の原発性副甲状腺機能亢進症の約1%に認めるという報告がある (GeneReviewsより引用)。

副甲状腺がんは、副甲状腺腫瘍の中でも約1%と非常に稀な疾患であるが、副甲状腺がんと判明した場合は、家族歴がなくてもCDC73遺伝学的検査を考慮する。なお、CDC73関連副甲状腺腫瘍におけるde novo変異の頻度は不明である。

日本人での遺伝子頻度

現時点で日本人家族性副甲状腺機能亢進症患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2023/03/17