Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/28
家族性胸部大動脈瘤・解離
循環器・内分泌疾患
MedGen ID
なし
指定難病等
要注意の転帰
急性大動脈解離
検査の保険適用
あり
概念・疫学

胸部大動脈瘤及び解離の原因としては、Marfan症候群に代表される結合組織異常が知られている。Marfan症候群の身体的特徴を有しない家族性集積の症例があり、家族性胸部大動脈瘤・解離 (Familial Thoracic Aortic Aneurysms and Dissections: FTAAD) として注目されている。大動脈瘤の径の拡大速度 (0.22cm/年) が、Marfan症候群や特発性のものよりも有意に速いこと (Marfan症候群で0.1cm/年、特発性で0.03cm/年) が特徴の一つとされている。発症部位・年齢は同一家族内でも一定でない。血管平滑筋細胞に発現が多い遺伝子に変異がある場合が多く、平滑筋収縮タンパクであるアクチン (ACTA2遺伝子) やミオシン (MYH11遺伝子) 、収縮調整タンパクのミオシン軽鎖キナーゼ (MYLK遺伝子) などが報告されており、いずれも常染色体優性遺伝形式を示す。原因遺伝子が同定できるのは約10-20%程度である。ACTA2遺伝子変異では脳動脈瘤、MYH11遺伝子変異では動脈管開存症などの合併が多い (医学のあゆみ, Vol. 264, No. 3, 211-215, 2018) 。遺伝性胸部大動脈疾患 (HTAD) とほぼ同義であるが、HTADはMarfan症候群、Ehlers Danlos 症候群、Loeys-Dietz症候群の特徴を持たないものとされる。胸部大動脈瘤 (6人/100,000人) のうち、Marfan症候群以外のものの頻度は19-21%と報告されている。

予後

大動脈基部の拡張から、大動脈弁閉鎖不全、そしてうっ血性心不全にいたる。最終的には大動脈瘤破裂・解離をきたし典型的な急性大動脈症候群の症状を呈し得る。

治療

外科的治療法は人工血管置換術が基本であり、上行瘤は径5.5cm以上、下行瘤では径6cm以上の場合適応とされる。Marfan症候群・FTAAD等の場合には、より早期に大動脈弁置換を含めた適応とする施設が多い。逆に高齢や脳梗塞既往、再手術例では手術危険度を勘案した手術時期の決定がなされる。内科的には降圧薬治療となるが、下行瘤ではβブロッカーの有用性が示されている。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
TGFBR261016812CC/11CB (P), 11CC/10CB (A)AAT3 (AD)https://omim.org/allelicVariants/190182
MYH1113290012CC/11CB (P), 11CC/10CB (A)AAT4 (AD)https://omim.org/allelicVariants/160745
TGFBR160919212CC/11CB (P), 11CC/10CB (A)AAT5 (AD)https://omim.org/allelicVariants/190181
ACTA261178812CC/11CB (P), 11CC/10CB (A)AAT6 (AD)https://omim.org/allelicVariants/102620
MYLK613780N/AAAT7 (AD)https://omim.org/allelicVariants/600922
PRKG161543612CC/11CB (P), 11CC/10CB (A)AAT8 (AD)https://omim.org/allelicVariants/176894
MFAP5616166N/AAAT9 (AD)https://omim.org/allelicVariants/601103
LOX61716812CC/11CB (P), 11CC/10CB (A)AAT10 (AD)https://omim.org/allelicVariants/153455
FOXE3617349N/AAAT11, suspectibility to (AD)https://omim.org/allelicVariants/601094
FBN115470012CC/11CB (P), 11CC/10CB (A)Marfan syndromehttps://omim.org/allelicVariants/134797
FBN1604308N/AMASS syndromehttps://omim.org/allelicVariants/134797
SMAD361379512CC/11CB (P), 11CC/10CB (A)LDS3 (AD)https://omim.org/allelicVariants/603109
TGFB261481612CC/11CB (P), 11CC/10CB (A)LDS4 (AD)https://omim.org/allelicVariants/190220
COL3A113005010CAEhlers-Danlos syndrome, vascular type (AD)https://omim.org/allelicVariants/120180
TGFB361558212CC/11CB (P), 11CC/10CB (A)LDS3 (AD)https://omim.org/allelicVariants/190230
AAT2607087N/AAAT2
AAT1607086N/AAAT1
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

HTADに関する遺伝学的検査での遺伝子頻度は、ACTA2の病的バリアントが12-21%と最も高く、TGFBR2が5%、TGFBR1とFBN1が各3%、SMAD3が2%と続き、MFAP5、MYH11、MYLK、PRKG1の頻度は各1%以下とされている (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

現時点で日本人でのHTAD患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/28