Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2024/09/19
海綿状血管腫
小児・神経疾患
OMIM
MedGen ID
指定難病等
要注意の転帰
局所の急性感染
歩行障害
検査の保険適用
なし
概念・疫学

血管病変を腫瘍と奇形に分類する ISSVA 分類に則って「海綿状血管腫 (Cerebral Cavernous Malformation: CCM)」という用語は「静脈奇形 (Venous Malformation: VM)」に置き換わりつつある。「静脈奇形」は胎生期における脈管形成 (vasculogenesis) の異常であり、静脈類似の血管腔が皮下や筋肉内などに増生する slow-flow の血液貯留性病変である。頭部MRI上海綿状血管腫に特徴的な所見があり、時期を置いて複数回撮影した際に全く変化を認めない、あるいは新規出血を認める場合に診断確実例となる。「静脈奇形」は血管奇形の中で最も頻度が高く、発症率の男女比は1:1-2である。家族性が見られるものは稀で、そのほとんどは孤発性である。血管奇形全体の頻度は、欧米では、治療が容易な、ごく小さなものまで含めると人口の1%程度と推定されているが、わが国での発生率は不明である。H23研究班の予備調査からは、全血管奇形の中で難治性血管奇形に該当する患者数は約10,000人以下と推測されている。

予後

予後に関する詳細な調査報告結果は見られないものの、特に脳幹病変では、頭蓋内出血や術後合併症による死亡を起こしうるという報告がある (Neurosurgery. 2010. PMID: 21107189)。

治療

静脈奇形の保存的治療では、弾性衣類による圧迫法が疼痛や腫脹に対して用いられる。従来、疼痛・出血・機能障害を有する病変または経過観察中、急速に増大する病変に対して、あるいは整容の目的で、手術が行われてきた。しかし近年、硬化療法が手術に取って代わる治療になりつつある。

Genes
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

家族性の海綿状血管腫の原因遺伝子としては、KRIT1が53-65%を占め、さらにCCM2が20%、PDCD10が10-16%を占める。各原因遺伝子で、シークエンス解析手法により病的バリアントを同定する割合は、KRIT1が85-95%、CCM2が40-70%、PDCD10が80-90%と報告されている (Mol Syndromol. 2013. PMID: 23801932, Am J Hum Genet. 2007. PMID: 17160895)。

日本人での遺伝子頻度

日本人の家族性海綿状血管腫10例に関して遺伝子解析を行った結果、病的バリアントが検出された症例は、KRIT遺伝子が2例、CCM2遺伝子が3例、PDCD10遺伝子が1例であったとする報告がある (J Clin Neurosci. 2013. PMID: 23485406)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2024/09/19