若年性ポリポーシス症候群 (Juvenile Polyposis Syndrome: JPS) は常染色体顕性遺伝形式をとる遺伝性消化管疾患であり、(1) 結腸、直腸に5個以上の若年性ポリープ (Juvenile Polyp: JP) の存在、(2) 全消化管にわたるJPの存在、(3) JPSの家族歴を有し消化管に1つ以上のJPの存在、のいずれかを満たすものと定義されている。結腸・直腸が好発部位であるが、胃や十二指腸、小腸にも生じることがあり全消化管にわたる検索が必要である。JPSは消化管悪性腫瘍のハイリスク疾患であり、消化管がんの発生率は17-55%である。また、一般人口と比較した場合、大腸がん発生の相対危険度が34.0とする報告もある。JPSの原因遺伝子としてSMAD4とBMPR1Aの2つが同定されているが、これらの遺伝子変異が証明されない症例も存在する。JPSと遺伝性出血性末梢血管拡張症 (Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia: HHT) の合併症候群 (JPS/HHTと呼ばれる) はSMAD4変異例の15%-22%で認められる。JPSの発症率は16,000-100,000人に1人と推定される。
ほとんどのJPは良性であるものの悪性化することがあり、JPS家系での、消化管がんに進展する生涯リスクは9-50%と推定されている。がん化する症例のほとんどは大腸がんであるが、胃がんその他の上部消化管がん及び膵臓がんの報告もある。大腸がんの発生率は35歳までに17-22%であり、60歳までに68%に達する (中央値は42歳)。JPSかつ胃ポリープを認める症例における胃がんの発生率は21%である。
消化管出血、消化管閉塞、及び大腸がんの発生リスクを軽減するためのルーチン大腸内視鏡検査と内視鏡的ポリープ切除術が行われる。ポリープ数が多い場合、全てあるいは一部の大腸及び胃の切除が必要な場合がある。HHTの症状出現時には、その対症療法も行われる。
Gene symbol | OMIM | SQM scoring* | Genomics England PanelApp | Phenotype | Variant information |
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BMPR1A | 174900 | PJI (AD) | https://omim.org/allelicVariants/601299 | ||
SMAD4 | 174900 | PJI (AD) | https://omim.org/allelicVariants/600993 | ||
SMAD4 | 175050 | JPHT (AD) | https://omim.org/allelicVariants/600993 |
JPS患者において、SMAD4の病的バリアントによるものが27%、BMPR1Aによるものが28%であり、残り45%は原因遺伝子不明であった(GeneReviewsより引用)。
日本人JPS患者で、73個の腫瘍に対して、SMAD4遺伝子のLoss of Heterozygosity (LOH) 及び病的バリアントを調べたところ、有効な解析ができた腫瘍64個のうち、50個 (78%) にLOHを、そして7個に体細胞変異を認めたという報告がある (Mutat Res. 1999. PMID: 10479724)。