Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/19
不整脈原性右室心筋症
循環器・内分泌疾患
MedGen ID
指定難病等
なし
要注意の転帰
心臓突然死
検査の保険適用
なし
概念・疫学

不整脈原性右室心筋症 (Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy: ARVC) は、右室心筋の線維性脂肪変性を伴う右室の拡大と機能低下、及び右室起源の不整脈を特徴とし、若年者や運動選手に突然死を生じうる進行性の心筋症である。主に右室であるが、ときに左室にも病変が及びうる。わが国では持続性心室頻拍の原疾患全体の約10%を占める。家族歴を有する患者は30-50%程度であり、家族内浸透率は20-30%と低く、同じ罹患家系のメンバーどうしでも病像は様々である。症状の初発年齢は40歳前後と報告されている。ARVD/Cの診断は、心臓の構造と心調律を調べる非侵襲的及び侵襲的検査法を組み合わせて行う。正確な有病率は不明であるが、一般集団中で1,000-1,250名に1人と推定されている。

これまでにARVD/C関連遺伝子座位は13カ所報告されているが、うち4カ所 (ARVD3、ARVD4、ARVD6、ARVD7) の原因遺伝子は同定されていない。

予後

ARVD/Cによる突然死のリスクは異論のあるところである。たとえ心室頻拍が起こっても、直ちに血行動態が破綻したり、突然死したりする例は多くないという意見と、明らかな心室機能障害がなくても心室性不整脈や突然死の傾向が存在するという意見がある。ARVD/Cの観察研究において、平均8.1年間の追跡期間中、16% (130名中の21名) が心血管系障害で亡くなり、その内訳は2/3が進行性の心不全で、残り1/3が突然死であった。死亡時の平均年齢は54歳であり、死亡者全てで心室頻拍の既往が認められた。

治療

疾患の自然歴が十分に分かっておらず、症例ごとに病像が多様であるため、ARVD/Cの治療方針は複雑であり、個別の対応が必要とされる。主な治療課題は失神・心停止・突然死の予防であり、右心不全の臨床症状や心室頻拍の既往を有する例では積極的な治療が必要とされる。心停止蘇生例や心室細動の既往を有する例、特に抗不整脈薬の効果が見られない例などで、植込み型除細動器 (ICD) の植込みも検討される。

Genes
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

遺伝学的検査での頻度は、PKP2 (ARVD9) の病的バリアントが10-52%と最も高く、DSG2 (ARVD10) が3-19%、DSP (ARVD8) が1-16%、DSC2 (ARVD11) が1-13%と続き、その他の遺伝子の変異は稀である (TMEM43の頻度は不明) (Neth Heart J. 2012. PMID: 22527912)。ARVD/C症例のうち、しかるべき割合はデスモゾーム関連遺伝子のcompound/digenic heterozygosityであるため、全てのARVD/C関連遺伝子の同時解析が推奨される。ただし全ての既知遺伝子を調べた場合でも、病的バリアントが同定できる比率は60%に満たない (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

日本人ARVD/C症例の発端者35名を調べたところ、19名 (54%) で既報の遺伝子の病的バリアントが同定された。PKP2が29% (10名)、DSPが20% (7名)、DSG2が14% (5名)、DSC2が3% (1名) であり、うち3名がdigenic heterozygote (PKP2とDSP、PKP2とDSG2、及びDSPとDSG2の組み合わせが1名ずつ)、1名がcompound heterozygote (DSC2) であった。初発症状の年齢と診断された年齢の平均は各々38.6歳と40.5歳であった (Circ J. 2013. PMID: 23514727)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/19