Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/21
ホモシスチン尿症
小児・神経疾患
OMIM
MedGen ID
指定難病等
なし
要注意の転帰
血栓塞栓症
検査の保険適用
あり
概念・疫学

ホモシスチン尿症 (Homocystinuria) は先天性アミノ酸代謝異常症の一種であり、メチオニンの代謝産物であるホモシステインが血中に蓄積することにより発症する常染色体劣性遺伝性疾患である。ホモシステインは、チオール基を介して生体内の種々のタンパクと結合する。その過程で生成されるスーパーオキサイドなどにより血管内皮細胞障害などをきたすと考えられている。狭義のホモシスチン尿症はシスタチオニンβ合成酵素 (CBS) 欠損症を指す。CBSはホモシステインからシスチンを合成する径路の入り口に位置し、CBSの活性低下によりホモシステインが蓄積する。ホモシステイン代謝のもう一つの径路は再メチル化によるメチオニン合成であり、新生児マススクリーニングでは、メチオニンを指標としてCBS欠損症をスクリーニングしている。発達遅滞/知的障害、水晶体偏位及び/または強度近視、骨格異常 (高身長、クモ状四肢) 及び血栓塞栓症を特徴とするが、その他、てんかん発作、精神医学的問題、ジストニアなどの錐体外路徴候、色素脱失、頬部潮紅、網状皮斑、膵炎などが見られる。いずれの臨床徴候も、重症度の個人差が大きい。CBSはビタミンB6を補酵素とし、CBS欠損症には大量のビタミンB6投与により血中メチオニン、ホモシステインが低下するタイプが知られている (ビタミンB6反応型)。白人では、このビタミンB6反応型が半数を占めるが、日本人では稀である。ビタミンB6反応型ホモシスチン尿症は、概して (全例ではないが) ビタミンB6非反応型よりも症状が軽い。確定診断は培養皮膚線維芽細胞や培養リンパ芽球細胞を用いた酵素活性測定や遺伝学的検査でなされる。わが国での患者頻度は約800,000人に1人とされる。

予後

血管障害としては冠動脈血栓症、肺塞栓、脳血栓・塞栓症が起こり、血栓症は、一般に思春期以降に起こり生命予後を規定する因子となるため 、一生涯を通じて治療を行う必要がある。

治療

治療は、生化学的異常の是正、とりわけホモシスチンとホモシステイン各々の血漿中濃度のコントロール、ならびに血栓症の予防を目的とする。新生児スクリーニングにより同定された新生児患者は、タンパク及びメチオニン制限食、場合によってベタイン (トリメチルグリシン等) の摂取、葉酸とビタミンB12の補給等の治療法により、血漿中総ホモシステイン濃度を正常値または正常値近傍に維持する。ビタミンB6 (ピリドキシン) 反応型の患者にはピリドキシン療法を行う。小児期後期以降は、血漿中ホモシスチン濃度を11μmol/l未満に抑え、血漿中総ホモシステイン濃度をできるかぎり正常値に近付けることを治療目標とする。ベタイン療法は青年期及び成人期の患者の重要な治療法である。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
CBS2362009CC/8CCHomocystinuria (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/613381
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

CBS遺伝子で最も高頻度に認められる病的バリアントは、p.Ile278Thrとp.Gly307Serの2つであり、共にエクソン8に存在する。

p.Ile278Thrは人種横断的に認められ、全病的バリアントの約25%を占める。イギリスでは29%、米国では18%でこの変異が検出され、デンマークなどのいくつかの国では、主要な変異である。p.Gly307Serはアイルランドでの主要な病的バリアント (全病的バリアントの71%) であり、英国では21%、米国では8%を占める (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

日本人CBS欠損症患者12家系についてCBS遺伝子の解析を実施したところ、欧米で高頻度にみられる病的バリアントであるI278Tは2アリル2家系のみで同定され、G307S、IVS11-2A>C、T191Mは検出されなかった (日本小児科学会誌. 1205-1210. 2005)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/21