皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症 (Cerebral Autosomal Dominant Arteriopathy with Subcortical Infarcts and Leukoencephalopathy: CADASIL) は、若年期から前兆を伴う片頭痛が先行した後、CT・MRIで同定される大脳白質病変が徐々に進行し、中年期から脳卒中危険因子がなくても反復性脳虚血発作を起こし、さらに、うつ症状、脳血管性認知症に至る。NOTCH3遺伝子に変異を認めることと、病理学的には、脳小血管平滑筋の変性と電顕でオスミウムに濃染する顆粒 (GOM) の蓄積を特徴とし、遺伝子診断又は病理診断で確定診断する。わが国で、虚血性脳血管障害に占めるCADASILの頻度は0.069% (ラクナ梗塞中では0.3%) という報告がある (老年期認知症研究会誌15巻)。
脳梗塞発症後15年から20年にわたり身体症状、認知機能障害が進行し、脳梗塞を繰り返すと60歳前後で寝たきりとなり、男性は65歳前後、女性は70歳前後で死亡する。
CADASILには有効性の証明された治療法はない。抗血小板療法がたびたび行われるが、CADASILに対する有効性は証明されていない。片頭痛は、症状発生の頻度に応じて対症的にも予防的にも治療を行うべきである。高血圧、糖尿病あるいは高コレステロール血症が併存する場合はそれぞれに対する治療が行われる。
Gene symbol | OMIM | SQM scoring* | Genomics England PanelApp | Phenotype | Variant information |
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NOTCH3 | 125310 | 9CA | CADASIL (AD) | https://www.omim.org/allelicVariants/600276 |
125人の非血縁のCADASIL患者に関して、上皮細胞成長因子 (EGF) 様反復配列をコードするすべてのエクソン領域をシークエンス解析したところ、96% (120人) の患者にNOTCH3遺伝子の病的バリアントが認められたという報告がある (Arch Neurol. 2005. PMID: 16009764)。
現時点で日本人でのCADASIL患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。