Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2021/06/22
ヘモクロマトーシス
小児・神経疾患
OMIM
MedGen ID
指定難病等
ガイドライン等
なし
要注意の転帰
肝硬変・原発性肝がん
心不全
検査の保険適用
なし
概念・疫学

HFE関連ヘモクロマトーシス: HFE-HHは、過剰な鉄蓄積を特徴とする遺伝性疾患で組織障害 (肝腫大、心筋障害、糖尿病、甲状腺機能低下症、性腺機能低下症や関節障害など) を引き起こす。血清フェリチン高値及びトランスフェリン飽和度の増加に基づいて臨床的診断を行い、遺伝学的検査により診断を確定する。連続的な瀉血による治療が一般的である。遺伝性ヘモクロマトーシスには、変異した遺伝子に応じて、1-4型の4病型がある。このうち、1型は、HFE遺伝子の突然変異によって生じる古典的な遺伝性ヘモクロマトーシスで、HFE-HHとも呼ばれる。80%を超える症例がC282Yホモ接合体またはC282Y/H63D複合ヘテロ接合体の変異に起因する。常染色体劣性遺伝形式をとり人種差が存在する。北欧系の人ではホモ接合体の頻度が1:200、ヘテロ接合体 (保因者) の頻度が1:8であるが、黒人では低頻度で、アジア系の人にはほとんどみられない。臨床的に認められるヘモクロマトーシス患者のうちの、83%がホモ接合体である。ただし、遺伝子異常の保有頻度から予想されるものより、表現型を伴う症例数は、はるかに少ない。

遺伝性ヘモクロマトーシスは、白人では最も高頻度な遺伝子性疾患である。しかし、わが国では希少疾患で正確な患者数は不明である。

予後

合併症としては肝疾患が最も一般的であり、肝硬変に進行する場合がある。肝硬変患者では,20-30%が肝細胞がんを発症する。肝疾患が最も一般的な致死性合併症であり、次に一般的なのは心不全を伴う心筋症である。

治療

ヘモクロマトーシスの治療は、臓器に沈着した鉄を除去することと、鉄沈着により生じた臓器障害への対症療法に分けられる。鉄の除去には瀉血を行い、瀉血できない症例に対しては鉄キレート剤 (鉄排泄促進薬) の投与が行われる。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
HFE23520010AB**HFE1 (AR)https://omim.org/allelicVariants/613609
BMP2235200N/AHFE, modifier of (AR)https://omim.org/allelicVariants/112261
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
**C282Y Homozygotes only
欧米人での遺伝子頻度

ヨーロッパ系の患者におけるHFE遺伝子の病的バリアントの標的遺伝子解析では、p.Cys282Tyrのホモ変異を60-90%に認め、p.Cys282Tyr (C282Y) とp.His63Asp (H63D) を複合ヘテロ接合で有するケースは3-8%とされている (GeneReviewsから引用、Nat Genet. 1996. PMID: 8696333)。

日本人での遺伝子頻度

現時点で、日本人ヘモクロマトーシス患者に関する遺伝子頻度解析の原著論文は見当たらないようである。HFE遺伝子のC282YとH63Dの2つの変異の人種差を調べた結果、両方とも白人で最も多く見られ、C282Y変異はアジア人で最も少なく、H63D変異は黒人で最も少ないという報告があり人種差の存在が示唆されている (Ethn Dis. 2006. PMID :17061732)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2021/06/22