Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/21
ゴーシェ病
小児・神経疾患
OMIM
MedGen ID
GeneReviews
指定難病等
要注意の転帰
周生期致死
検査の保険適用
あり
概念・疫学

ゴーシェ病 (Gaucher Disease: GD) は糖脂質が組織に蓄積するスフィンゴリピドーシスの一つであり、本疾患ではグルコセレブロシダーゼ (別名、β-グルコシダーゼ、GBA) 遺伝子変異によりGBA活性が低下あるいは欠損する。 その結果、生体膜の構成成分であるスフィンゴ脂質の分解過程で、基質であるグルコセレブロシドが体中のマクロファージに蓄積し、肝脾腫、病的骨折等の病態を呈する。GDの臨床像は周生期死亡をきたす重症型から無症状型まで連続的で多彩である。GDは1型 (非神経型)、2型 (急性神経型)、3型 (亜急性神経型) と呼ばれる主要な3つの臨床病型の他、周生期致死型、心臓血管型という亜病型に分類される。GD1型は、臨床症状や画像診断検査での骨所見 (骨減少症・局所性骨溶解性病変や骨硬化病変・骨壊死)、肝脾腫、貧血、血小板減少症、肺疾患が特徴であり、原発性中枢神経病変は見られない。GD2型及び3型では、原発性中枢神経病変が特徴的である。2歳以前に発症して精神・運動面の発達遅滞を伴い、病状の急速な進行により2-4歳で死亡する症例はGD2型に分類される。GD3型は、2歳未満で発症する場合もあるが、より緩徐な経過を示すことが多く20歳代もしくは30歳代までの生存が可能な例もある。周生期致死型は魚鱗癬やコロジオン皮膚異常、もしくは非免疫性胎児水腫を伴う。心血管型は大動脈弁と僧帽弁の石灰化、軽度脾腫、角膜混濁、核上性眼筋麻痺が特徴である。心肺合併症は全ての臨床病型で見られるが、頻度や重症度に差がある。骨髄にゴーシェ細胞が存在することが特徴的で、確定診断は線維芽細胞のGBA活性低下もしくはGBA遺伝子の病的バリアントの同定により行う。

GDは常染色体劣性遺伝形式をとり、発症の性差はないが、民族間に大きな頻度差がある。日本人での発症頻度は40,000-60,000人に1人と推定されており、現在までに約150名の患者が同定されている。 病型別にみると3型が最も多い。世界的に見るとアシュケナージ系ユダヤ人で多く900-1,000人に1人、非ユダヤ人で60,000-100,000人に1人が発症するとされており、欧米人では1型が大多数を占める。この差は遺伝子型の違いに由来する。

予後

臨床病型によって予後は異なり、1型では酵素補充療法 (ERT)での予後は良好である。一方、2型では乳児期までに発症し神経症状が急速に進行して、ほとんどが2-3歳までに死に至る。 新生児期に発症する症例では胎児水腫や魚鱗癬を呈する。3型では神経症状を伴うが、2型よりもその程度は軽度で、進行は緩徐である。

治療

わが国では、すべての病型のGDに対してERTの保険適用があり、実地臨床の場で行われている。 ERTと同じく保険収載されている骨髄移植 (BMT) は、肝脾腫や血液学的所見の改善だけでなく、 神経症状の進行停止あるいは改善も期待できるが、 graft versus host diseaseなどの合併症のリスクがあるため、 実際に行われる症例は限定されている。また基質合成阻害療法 (SRT) は、すでに欧米で行われているが、国内ではGD 1型に対して治験が開始されているところであり、早急な認可が期待される。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
GBA2308009CBGD, type I (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/606463
GBA230900N/AGD, type II (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/606463
GBA2310009CBGD, type III (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/606463
GBA2310059CBGD, type IIIC (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/606463
GBA608013N/AGD, perinatal lethal (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/606463
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

GDに関する遺伝子変異頻度は、GBA遺伝子内の4つの主要な変異 (NM_000157.3: c.1226A>G, c.1448T>C, c.84dupG, c.115+1G>A) が、アシュケナージ系ユダヤ人で病的バリアントの90%を占め、非ユダヤ人で病的バリアントの50-60%を占める。非ユダヤ人のGD患者では、1つの主要変異と別の希少変異による複合ヘテロ接合で発症する傾向がみられる。GBA遺伝子でシークエンス解析手法により病的バリアントを同定する割合は99%以下と報告がある (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

GDには、8つの主要なGBA遺伝子変異 (NM_000157.3: c.1226A>G, c.1448T>C, c.84dupG, c.115+1G>A, c.754T>A, c.1504C>T, c.1342G>C, RecNciI: Recombinant allele derived from a recombination between functional GBA and pseudogene GBAP1) があるが、日本人における、これらの病的バリアントの同定率は約60%といわれている (厚生労働省難治性疾患等政策研究事業: ライソゾーム病に関する調査研究班ホームページ: http://www.japan-lsd-mhlw.jp/lsd_doctors/gaucher.htmlより引用)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2020/05/21