フェニルケトン尿症 (PKU) は、必須アミノ酸であるフェニルアラニン (Phe) をチロシンに変換するフェニルアラニン水酸化酵素 (PAH) の活性低下によって、血中のPheが過剰に蓄積する常染色体潜性遺伝性疾患であり、原因遺伝子はPAH遺伝子である。血中Phe値の高値が持続すると知的障害やけいれん等の神経症状を発症し、またチロシンの欠乏により赤毛や色白などメラニン色素の欠乏を引き起こす。PKUは、診断時の血漿中Phe値により、古典的PKU (20mg/dL以上) 、軽症PKU (10mg/dL以上20mg/dL未満) 、軽症高Phe血症 (10mg/dL未満) に分類されている。日本における発生頻度は約80,000出生に1例と報告されている (難病情報センターより引用) 。また、補酵素テトラヒドロビオプテリン (BH4) に反応して血中Phe値が低下するBH4反応性PKU (または、BH4反応性高フェニルアラニン血症) が存在する。新生児マススクリーニングでは、PKUもBH4欠損症も共に高Phe血症として発見されるが、治療法が異なるために早期に鑑別診断することが必要である。遺伝子の変異は極めて多彩であることから、診断に必須とはされていない。PKUでは、Pheの摂取を制限し、体内のPheとその代謝産物の蓄積を改善することが治療の基本である。食事療法は成人になっても継続されることが必要である。BH4欠損症では、BH4の適応拡大が認められたため、食事療法に代わって薬物療法が可能になった。
女性PKU患者が妊娠し、胎児に子宮内発育不全、小頭症、心奇形などの症状が出現する場合があり、これを母性PKUという。妊娠前からPhe制限食を開始し、妊娠全期間を通して血中Phe値をコントロールすることが必要である。
早期に治療を開始したPAH欠損症患者では、優れた予後を示す一方、無治療では重篤で不可逆的な脳障害のリスクが高い。
新生児では早期にPhe摂取量を適切に制限し、血中Phe値が2-4mg/dLまで低下するように摂取量を調節する。PAHの補酵素であるBH4欠損症と診断された場合には、BH4補充療法を行う。
Gene symbol | OMIM | SQM scoring* | Genomics England PanelApp | Phenotype | Variant information |
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PAH | 261600 | Phenylketonuria (AR) | https://omim.org/allelicVariants/612349 | ||
PAH | 261600 | Hyperphenylalaninemia, non-PKU mild (AR) | https://omim.org/allelicVariants/612349 |
PKUでは、97-99%の患者でシークエンス解析によりPAH遺伝子の病的バリアントが検出されるとの報告がある。PAH遺伝子には400以上の病的バリアントが知られている。重複と欠失の頻度はPAH遺伝子変異のうち1-3%と推測されている (GeneReviewsより引用)。
現時点で日本人PAH欠損症症例における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。