ドーパ反応性ジストニア (Dopa-Responsive Dystonia: DRD) は、GTPシクロヒドラ―ゼ1 (GCH1) 遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントによる常染色体顕性遺伝性疾患であり、瀬川病、遺伝性ジストニア (DYT5) とも呼ばれる。男性での浸透率が低く、小児期発症者には女性が多い。GCH1はドーパミンの産生に必須なテトラヒドロビオプテリン (BH4) の生合成酵素である。DRDでは、BH4が低下し脳内のドーパミン量が不足することでジストニア症状を発症するが、L-dopaで良好に改善する。10歳以下で、歩行時の下肢ジストニアで発症し、尖足・内反足をきたしやすい。日内変動を示して運動後や夕方に悪化するが、睡眠や休息で改善する。膝蓋腱反射が亢進しやすく姿勢時振戦、筋強剛、手の動作性ジストニアの報告もある。知的障害はなく、脳の器質的病変も伴わない。GCH1遺伝子の分子遺伝学的検査によって診断ができるが、病的バリアントが検出されない場合には生化学的検査が必要となる。臨床像と病的バリアントのタイプには関連性はない。
民族によるDRD有病率の差はなく、1,000,000人に0.5-9人と推定されている (ClinGenより引用)。
小児期発症の場合、成人期まで徐々に筋強剛が進展するが、30歳以降は定常状態となる。成人では、パーキンソン病様症状などで発症する例も報告されている。
L-ドーパの投与が著効する。パーキンソン病患者にみられるようなL-ドーパ長期服用による副作用も発現しない。
Gene symbol | OMIM | SQM scoring* | Genomics England PanelApp | Phenotype | Variant information |
---|---|---|---|---|---|
GCH1 | 128230 | 11CC/9CC/8CD | DRD (AD, AR) | http://omim.org/allelicVariants/600225 |
ドイツ人の患者についてGCH1遺伝子のシークエンス解析を実施したところ、DRDの典型例50名のうち54%、DRDの非典型例86名のうち5%で一塩基バリアントが同定された。そのうち47%がミスセンスバリアント、44%がイントロンのスプライス部位のバリアントであり、ナンセンスバリアントとフレームシフトバリアントはそれぞれ6%と3%であった。また一塩基バリアントが同定されなかった患者について欠失解析を実施したところ、DRDの典型例では8%、非典型例は1%に欠失が検出された (J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2008. PMID: 17898029)。
現時点で日本人患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。