Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2022/05/24
動脈蛇行症候群
OMIM
MedGen ID
指定難病等
なし
ガイドライン等
なし
要注意の転帰
右心不全
呼吸不全
検査の保険適用
なし
概念・疫学

動脈蛇行症候群 (Arterial Tortuosity Syndrome: ATS) は、大型から中型の動脈における蛇行、拡張、狭窄、解離、動脈瘤形成などの、動脈壁内層での弾性線維の異常を特徴とする常染色体劣性遺伝性疾患であり原因遺伝子としてSLC2A10が報告されている。その他の症状としては、他の結合組織病でも見られるのと同様、特徴的な顔貌と結合組織の異常が認められる。本症では脳循環や腹部血管での虚血イベントのリスクが上昇し、大型静脈の拡張や弁逆流・僧帽弁逸脱も合併しうる。従来、血管壁細胞増殖を促進するTGFβシグナリングの増加が本疾患の原因と考えられていたが、最近、他のメカニズムとして、コラーゲンや、エラスチンヒドロキシラーゼの補助因子であるアスコルビン酸の輸送異常が提唱されている。ATSの診断基準はまだ確立されていないが、ATSの唯一の原因遺伝子であるSLC2A10の遺伝学的検査にてホモ接合体または複合ヘテロ接合体で病的バリアントが検出されることにより確定診断される。

ATSの罹患頻度に関して信頼できるデータは報告されていない。1/1,000,000出生未満の稀な疾患だと考えられているが、この推定よりも患者数が多く存在するとする報告もある (Hum Mutat. 2008. PMID: 17935213)。ATSは全ての人種に起こりうるが、最も報告が多いのはヨーロッパ及び中東からであり、男女差はない。

予後

4才以下で40%が死亡するという初期の報告がある (Am J Med Genet A. 2004. PMID: 15529317)。この解析はより重症な患者を対象にしており、遺伝学的に確定診断を受けた、より多数の患者の解析結果に基づき、より軽症な疾患スペクトラムであるとする報告もある (Hum Mutat. 2008. PMID: 17935213)。

治療

動脈壁にかかる血行力学的ストレスの緩和のためにβ遮断薬やACE阻害薬、ARBが使用される。これらの薬剤の有効性はATSでは確立しておらず、動脈狭窄の存在下、特に腎動脈狭窄下では腎不全のリスクが上昇するため、これらの薬剤の使用には注意を要する。その他の症状については原疾患に準じた治療が行われる。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
SLC2A1020805010NC/7DN/6DD/6NDATORS (AR)https://www.omim.org/allelicVariants/606145
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

ATSの患者29人において、シークエンス解析によりSLC2A10に病的バリアントを同定したのは25人 (86%) であったとする報告がある (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

現時点で日本人ATS患者における遺伝子頻度解析に関する原著論文は見当たらないようである。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2022/05/24