Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2022/05/12更新日: 2022/05/12
膿疱性乾癬 (汎発型)
OMIM
MedGen ID
GeneReviews
なし
指定難病等
要注意の転帰
心・循環不全
アミロイドーシス
検査の保険適用
なし
概念・疫学

膿疱性乾癬 (汎発型) (Generalized pustular psoriasis: GPP)は自己免疫疾患のひとつと考えられており、厚生労働省が定める指定難病である。急激な発熱、全身倦怠感とともに全身または広範囲の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱 (病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下嚢胞) が多発、融合して膿海を形成する。尋常性乾癬 (psoriasis vulgaris: PsV) を伴うGPPと伴わないGPPがあり、再発を繰り返すことが本疾患の特徴である。経過中に全身性炎症反応に伴う臨床検査値の異常を示し、ときに粘膜炎症や関節炎を合併するほか、まれに心・循環不全、呼吸不全、眼症状、二次性アミロイドーシスを合併することがある。それゆえ、皮膚疾患というよりは、全身性炎症疾患として捉えられる。PsVを伴うGPPにおいては、Caspase recruitment domain family memb er 14 (CARD14) をコードするCARD14遺伝子のバリアントとの関連が報告されている。一方、PsVを伴わないGPPの大半は、IL36RN遺伝子変異によるIL-36受容体拮抗因子 (interleukin-36 receptor antagonist: IL-36Ra) の機能欠損が原因である。遺伝形式は基本的に常染色体潜性遺伝 (劣性遺伝) を示すが、ヘテロ接合体変異でも発症する (PMID: 24476623)。

フランスにおけるGPPの有病率は1,000,000人に1.76人 (PMID: 17229609)、また韓国では乾癬患者の2.0-2.7%がGPP (PMID: 29200766 ) であったとの報告がある。本邦においては1,000,000人に7.46人という報告もあるが (PMID: 8721499)、実際の有病率はこれよりも高いと考えられる。平成28年度における医療費受給者証保持者数は2,072人で、1年あたり約80人が新規に登録されている (難病情報センター)。

予後

治癒あるいは膿疱が減少した軽快例は43.0%の患者で認められるが、膿疱出現を繰り返す例や、膿疱が増加した再発例も多い。稀だが、心血管系異常、アミロイドーシス、メトトレキサート合併症などによる死亡例も存在する (難病情報センター)。

治療

第一選択薬はエトレチナートとシクロスポリンである。他の全身治療に抵抗性の症例や、関節炎の激しい症例にメトトレキサートが推奨されるが、処方時は副作用 (肝障害、骨髄抑制、間質性肺炎など) に留意し、十分なインフォームドコンセントに配慮する。妊娠までの最低限の薬剤中止期間は、エトレチナートでは女性2年、男性6か月、メトトレキサートでは男女ともに3か月である。TNFα阻害薬は有効であり、特に重症関節症合併例に対して推奨される。IL-17A阻害薬、IL受容体阻害薬も膿疱性乾癬に有効性が示されて適応追加された。また顆粒球吸着除去療法が副作用の少ない安全な治療として推奨されている (難病情報センター)。

GPPは生命を脅かす病態であるため、妊婦や授乳婦、小児の患者治療に際しては、安全性が確立されていない薬剤を組み入れざるを得ないことがある。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
IL36RN614204N/APsoriasis 14, pustular (AR)https://omim.org/allelicVariants/605507
AP1S3616106N/APsoriasis 15, pustular, susceptibility to (AD)https://omim.org/allelicVariants/615781
CARD14602723N/APsoriasis 2 (AD)https://omim.org/allelicVariants/607211
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

IL36RN遺伝子のloss-of-function変異は家族性や孤発性のGPP症例の23-37%で検出される。またバリアントの検出率には地域差がみられ、マレーシアの患者で28.8%、ヨーロッパの患者で34.7%、漢民族では46.8-60.5%である (PMID: 24476623)。

日本人での遺伝子頻度

本邦では、IL36RN遺伝子のc.28C>Tとc.115+6T>Cという2つの創始者変異が合わせて人口の約2%に認められる (Pharma Medica 39 (10): 23-27, 2021.)。PsVを伴うGPP患者では、CARD14遺伝子のc.526G>Cがヘテロ接合体で高頻度に検出され (保因者率:21.1%、アレル頻度:10.5%)、その頻度は健常人コントロール (保因者率:3.0%、アレル頻度:1.5%) やPsV患者 (保因者率:4.0%、アレル頻度:2.0%)よりも有意に高かった。なお、PsVを伴わないGPP患者11症例では当該変異が検出されなかった (PMID: 24476623)。

掲載日: 2022/05/12更新日: 2022/05/12