Knowledge base for genomic medicine in Japanese
掲載日: 2019/10/10更新日: 2022/05/25
悪性高熱症
小児・神経疾患
MedGen ID
指定難病等
なし
要注意の転帰
循環不全による死亡
検査の保険適用
なし
概念・疫学

悪性高熱症 (Malignant Hyperthermia Susceptibility: MHS) は全身麻酔時の重篤な合併症であり、揮発性吸入麻酔薬 (ハロタン等) やスキサメトニウム等の筋弛緩薬などを用いた通常の全身麻酔を受けたとき、素因・感受性のある患者で悪性高熱症を発症する。遺伝形式は常染色体優性であり、その浸透率は様々である。ほとんどの場合、原因となる突然変異が骨格筋のリアノジン受容体に影響を与えるが、その他にも原因となる突然変異が少なくとも22個同定されている。素因・感受性を持つ者では、誘因薬物の投与により、特徴的な症状である筋硬直をきたし、原因不明の頻脈・不整脈・代謝性アシドーシスなどを呈する。血圧は不安定となり、呼気炭酸ガス分圧上昇・低酸素血症が出現し、その後急激な体温上昇が始まる (15分間に0.5°C以上、体温40°C以上)。横紋筋融解により尿は赤褐色調 (ミオグロビン尿) を呈し、血清カリウム値が上昇する。迅速な確定診断検査はないが、心電図、血液検査及びミオグロビン尿の尿検査などを含む、合併症の検査を行う必要がある。

本症は全身麻酔症例 100,000人に 1-2人の頻度で発生する。1960年から現在までに、わが国で 劇症型の悪性高熱症の発生総数は 400症例を超え、男女比はほぼ 3:1で男性に多い。本症は遺伝性骨格筋疾患であることより、潜在的な有素因者は相当数存在すると推測される。

予後

死亡率は1960年代の70-80%から2000年以降では15%程度にまで減少してきた。特異的治療薬であるダントロレンを使用した症例での死亡率は10%以下に低下している。

治療

治療としては、誘因薬物の投与中止、ダントロレンの静注と全身冷却をおこなう。

Genes
Gene symbolOMIMSQM scoring*
Genomics England
PanelApp
PhenotypeVariant information
RYR1145600MHS1 (AD)https://omim.org/allelicVariants/180901
CACNA1S601887MHS5 (AD)https://omim.org/allelicVariants/114208
STAC3255995N/AMYPBB (AR)https://omim.org/allelicVariants/615521
*ClinGen Actionability Working GroupのSemi-quantitative Metric (SQM) scoring、Outcome/Intervention Pairに関する情報は https://clinicalgenome.org/working-groups/actionability/projects-initiatives/actionability-evidence-based-summaries/ を参照。
欧米人での遺伝子頻度

既知変異のターゲット解析または原因遺伝子のシークエンス解析による、悪性高熱症有素因者での病的バリアントの検出頻度は、RYR1が70-80%、CACNA1Sが1%と報告されている (GeneReviewsより引用)。

日本人での遺伝子頻度

日本人の悪性高熱症の有素因者58人に関してRYR1遺伝子のシークエンス解析を行ったところ、33人 (57%) に病的バリアントもしくは病原性疑いのバリアントが同定されたという報告がある (Anesthesiology. 2006. PMID: 16732084)。

掲載日: 2019/10/10更新日: 2022/05/25